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*****令和3年12月25日(土)第140号*****

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コロナ療養後、120日が経過した時点の「後遺症の保有率」は、40代から70代で4割以上
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◇─[はじめに]─────────

 昨日(12月24日)、東京都の小池百合子都知事が「都内で初となる、オミクロン株の市中感染(=海外渡航歴がなく、感染経路が不明な感染)が確認された」と発表しました。大変残念ですが今後、都内でオミクロン株の感染が拡大することは必至と思われます。

 現時点ではまだ、オミクロン株に対する医学的なデータが十分には集まっていないようですが、専門家の話しを総合すれば「これまでの変異株と比べて、重症化するリスクは低いものの、その感染力は強いと思われる」との評価が多数聞かれます。

 この推測が正しいとすれば、あまり考えたくはないことですが、どうやら「年末年始にかけて、オミクロン株による『第6波』が到来する」と想定して、可能な限りの感染防止対策を実践する必要がありそうです。

 ただ「重症化するリスクは低い」との推測も正しいとすれば、次に考えるべきことは「もし感染してしまったら、どのような療養生活を送るのか?」「その後の後遺症は、どうなるのか?」になると思われます。

 この「療養生活」と「後遺症」について、東京・世田谷区がこのほど「新型コロナウイルス感染症の後遺症についてのアンケート調査結果」をまとめ、11月15日に公表し、厚労省の新型コロナの担当部署にも提出したそうです。

 オミクロン株が、感染が治癒した後の「後遺症」として残る影響はまだ不明ですし、そもそもオミクロン株に感染しないことが最も望ましいことですが、世田谷区は「後遺症への適切な対応や、感染予防の啓発を行う」ことを調査の目的としています。

 そこで今回、本紙ではこの世田谷区の調査結果の要旨をお伝えし、読者の皆さんにオミクロン株の感染を「正しく、おそれる」ための参考にしてもらいたいと考えました。繰り返しになりますが、まずはオミクロン株の感染防止に最善を尽くして頂きたいと思います。

 日本介護新聞発行人

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 ※今回の記事は、世田谷区が11月15日に公表した「新型コロナウイルス感染症の後遺症についてのアンケート調査結果」の「概要版」の中で、本紙の読者の皆さんに参考になる部分を抜粋しています。

 ※なお記事中で、文頭が「▼」印の文章は、この「概要版」の中で世田谷区が調査結果を分析した内容のコメントであり、その他の文章は弊紙の執筆によるものです。あらかじめ、お断りをしておきます。

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療養期間は平均15.5日、療養中の症状は約5割が「あった」が「特になし」も4割弱
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 今回の世田谷区の調査は、世田谷保健所に提出された新型コロナの発生届の中で、保健所で管理している者(令和3年4月15日時点の)8,959名(死亡者を除く)を対象とし、調査期間は今年7月16日から8月6日までとしています。

 つまり、例えば4月15日時点で「新型コロナに感染したが、療養を終えた」人は、今回の調査の始まりの時点(7月16日)では「3ヶ月が経過」していることになります。また東京都では、新型コロナの流行の「波」を次のように定義しています。

 第1波=令和2年4月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた波
 第2波=令和2年8月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた波
 第3波=令和3年1月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた波
 第4波=令和3年5月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた波
 第5波=令和3年8月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた波

 今回の世田谷区の調査は「令和3年4月15日時点」を対象としているため、回答内容は「第1波」「第2波」「第3波」までが対象となっています。また集計した結果では、性別では男女ほぼ半数ずつで、年代別では60代以上が全体の4分の1弱を占めています。

 さらに全体の7割弱は「基礎疾患はなし」です。これを前提に、新型コロナの発症者の「療養中の症状」と「療養期間」について調査・分析した結果は、以下のようになりました。

 療養期間は平均15.5日。回答割合でみると「13~14日」が29.6%で最も高く、次いで「8~10日」が25.8%となっている。

 療養中の症状は「熱・咳・味覚障害などがあった」「点滴程度の入院をした」が52.1%で最も高く、次いで「特になし」が37.9%。「入院中に酸素が必要であった」が7.0%となっている。

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療養を終えて、退院した後の症状(後遺症の有無)は「ある」「なし」がほぼ半分ずつ
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 次に、療養を終えた後の「退院日・療養終了日以降の症状(=後遺症の有無)」について、以下のような結果となりました。

 退院日、または療養終了日以降の症状は「症状があった・症状がある」が48.1%。「症状はない」が49.3%と、ほぼ半数になっている。

 性別でみると「症状があった・症状がある」は女性(54.3%)で、男性(41.9%)よりも12.4ポイント高くなっている。年齢別でみると「症状があった・症状がある」は30代(53.0%)、40代(54.2%)、50代(54.6%)が半数以上と高くなっている。

 基礎疾患の有無別でみると「症状があった・症状がある」は「あり」(50.4%)が「なし」(46.8%)よりも3.6ポイント高くなっている。

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後遺症は「嗅覚障害」「全身の倦怠感」が約5割「味覚障害」が4割強で、女性の方が……
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 さらに「退院日・療養終了日以降に、後遺症があった・あるについて」は、以下のような分析結果となりました。

 退院日、または療養終了日以降にあった・ある症状は「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」が54.4%で最も高く、次いで「全身の倦怠感(=だるさ・重さ)」が50.0%。「味覚障害(=味がわかりづらい)」が44.8%となっている。

 性別でみると、女性が男性を上回っている症状が多く「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」は女性(59.6%)が男性(47.5%)よりも12.1ポイント高くなっている。「味覚障害(=味がわかりづらい)」も、女性(49.3%)が男性(39.1%)よりも10.2ポイント高い。

 年齢別でみると「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」は10代から30代で6割以上と高く、「味覚障害(=味がわかりづらい)」も10代から30代で5割以上と高くなっている。一方「全身の倦怠感(=だるさ・重さ)」は40代から80代で5割以上と高くなっている。

 基礎疾患の有無別でみると「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」は「なし」(62.6%)が「あり」(37.9%)よりも24.7ポイント「味覚障害(=味がわかりづらい)」も「なし」(50.1%)が「あり」(33.4%)よりも、16.7ポイント高くなっている。

 一方「息苦しさ」は「あり」(37.1%)が「なし」(25.9%)よりも11.2ポイント高くなっている。陽性診断の時期別でみると「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」は、第2波(58.6%)、第3波(56.3%)が5割以上と高くなっている。

 一方「全身の倦怠感(=だるさ・重さ)」は、第1波(61.7%)、その他(61.5%)が
6割以上と高くなっている。

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一定期間経過後の「後遺症の保有率」は、40代から70代で「120日」時点でも4割以上
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世田谷区・新型コロナ後遺症の調査結果 「退院日、または療養終了日」から、一定期間が経過した後の「後遺症の保有率」をみてみると、以下のようになりました=画像・世田谷区HPより。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工

 一定期間経過後の「後遺症の保有率」は、男性では「30日」時点が7割近くと高くなっている。男性を年齢別でみると、「0日」時点は30代の保有率が7割を超えて高くなっている。

 また「30日」時点では、30代の保有率が6割台半ばまで下がり、40代から60代の保有率が7割以上まで上がっている。

 「30日」以降は、どの年代の保有率も低くなる傾向にあるが、40代から70代の保有率は「120日」時点でも4割以上と高くなっている。女性では「30日」時点が6割台半ばと高くなっている。

 女性を年齢別でみると、「0日」時点は20代の保有率が7割近く、30代の保有率が6割台半ばと他の年齢と比較して高い傾向にある。「30日」時点では、20代、30代の保有率はやや下がる傾向にあるが、40代から70代の保有率は「0日」時点から上がっている。

 また女性においても「30日」以降は、どの年代の保有率も低くなる傾向にあるが、40代から70代の保有率は「120日」時点でも4割以上と高くなっている。

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「嗅覚障害」は退院日・療養終了日から3ヶ月以上経っても、男女年代問わず割合が高い
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 「退院日・療養終了日」から3か月以上の長期にわたり、日常生活に支障がある症状については、以下のような結果を示しました。

 3ヶ月以上、日常生活に支障がある症状を男女・年齢の別でみると「嗅覚障害(=匂いが感じにくい)」は、男女ともに多くの年代で3ヶ月以上、日常生活に支障がある割合が高くなっている。

 また「全身の倦怠感(=だるさ・重さ)」は、女性50代が4割近くと高くなっている。

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新型コロナの軽症者は、療養終了後も4割以上の人が「体調や健康面への不安」を抱える
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 後遺症の「あり」「なし」に関わらず、療養生活中や終了後の生活で困ったことを尋ねたところ、以下のような回答がありました。

 療養生活中や終了後の生活で困ったことは「体調や健康面への不安」が34.2%で最も高く、次いで「家族への感染の不安」が31.5%。「療養生活での不安やストレス」が27.8%となった。

 性別でみると「体調や健康面への不安」は女性(39.1%)が男性(29.6%)よりも9.5ポイント高く「療養生活での不安やストレス」も女性(32.2%)が男性(23.7%)よりも8.5ポイント高くなっている。

 一方「特になし」は男性(31.8%)が女性(23.1%)よりも8.7ポイント高くなっている。

 年齢別でみると「特になし」は10代と、70代から90代で4割以上と高くなっている一方で「体調や健康面への不安」「家族への感染の不安」は30代、40代、50代が他の年代と比較して高くなっている。

 療養中の症状別でみると「特になし」は「症状なし」(38.5%)が高くなっている一方で「体調や健康面への不安」は、軽症以上の症状で4割以上と高くなっている。

 後遺症の有無別でみると「体調や健康面への不安」は「あり」(46.6%)が「なし」(23.2%)よりも23.4ポイント高くなっている。「仕事の不安」、「療養生活での不安やストレス」も「あり」が「なし」よりも10.0ポイント以上高くなっている。

◇─[おわりに]─────────

 新型コロナの感染に限らず、どんな病気でも「早期発見・早期治療」は鉄則だと思いますが、この新型コロナは男女や年代の別に関わらず、誰にでも感染します。しかも「早期発見・早期治療」で重症化が防げても、その後は「後遺症」のリスクがつきまといます。

 特に嗅覚障害は、全ての年代で長期にわたり「後遺症」として残るようです。高齢者にとって「食べる」ことの楽しみは、他の年代と比べても特段の「意味」があると弊紙では考えています。

 高齢者はまず、新型コロナに感染しないことが肝要ですが、仮に感染してしまった場合、しかも「後遺症」が残ってしまったケースでは、今回の世田谷区の調査結果を踏まえて、周囲が適切に寄り添うことが重要になると思われます。

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