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*****令和3年10月29日(金)第138号*****

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高齢者施設のクラスター発生「現場で、誤った感染対策が散見されるので、正しい対策を」
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◇─[はじめに]─────────

 このところ、全国的に新規感染者数が低い水準で推移している中で、特に東京都は1日当たり50人以下が続いています。このまま、新型コロナが「ゼロ」になってくれれば良いのですが、専門家で「これで終息する」と指摘した予想は、聞いたことがありません。

 むしろ「新規感染者数が抑えられている今こそ『第6波』に備えるべき」との声が多数です。さらに、東京都の新型コロナ感染症モニタリング会議(都専門家会議)では「いまだに、高齢者施設等でクラスターの発生が散見される」と指摘しています。

 東京都では「第5波」で、一時期は新規感染者が連日5千人を突破する事態にまで至り、高齢者施設も相当な覚悟を持って感染対策に当たっていたものと推測されます。それにも関わらず、いまだに高齢者施設でクラスターの発生が散見されるのは、なぜなのか…?

 この疑問の解決のため、都専門家会議の構成員でもある「東京iCDC専門家ボード」(都が設置した組織で、最新の科学的知見に基づき、政策に繋がる提言を実施する。以下「専門家ボード」)が10月14日に開催された都専門家会議で、その理由について述べました。

感染対策事例集・表紙 この日の会議で専門家ボードは「高齢者施設・障害者施設の新型コロナウイルス感染対策事例集」=画像は「事例集」の表紙=の発行を発表しました。ここで、数多くの現場を検証した結果として、高齢者施設等でクラスターが発生している原因を「現場での誤った感染対策」と指摘しました。

 具体的には「事例集」の発行目的で「これまで、高齢者施設等では多くのクラスターが発生しており、現場では誤った感染対策が散見されている。誤った対策の事例を示し、職員に正しい感染対策を啓発することで、施設の感染拡大を予防する」と述べています。

 「事例集」では、感染対策が必要な場面を7分野に分けて、それぞれに「間違った事例」「正しい事例」を示しています。本紙ではこのうち、介護サービス利用者の立場からも感染防止対策に役立つ3つの項目(環境整備・手指衛生・日用品)を今回取り上げました。

 今後予想される「第6波の到来」に備えて今一度、自らの感染対策を見直すための参考にして頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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1.環境整備=整理整頓に努めることが重要
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 ■■【1-1.整理整頓に努めることで、環境清掃が効果的に実施できる】

 ▼間違った事例=職員が使用するエリア(例えば、職員の事務室など)が雑然としており、環境清掃(=医療では、患者に対し常に清潔で衛生的な生活環境を提供し、快適な療養生活を過ごせる状態に保持すること)を行う際に、効果的な実施ができていなかった。

 ▽正しい事例=物を減らして、整理整頓することで、環境清掃がしやすくなる。

 ◆解説=多くの職員が触れる場所を中心に、整理整頓に努め、清拭の妨げにならないように工夫しましょう。

 ■■【1-2.「おむつカート」を介して、感染が広がる危険性がある】

 ▼間違った事例=介護の時など「おむつカート」を使用する際に、カートに物品を山積みにし、汚染された物と清潔な物とが混在していた。

 ▽正しい事例=「おむつカート」を使用する場合は、積載する物を極力減らして、汚染された物と清潔な物とを明確に分別する。

 ◆解説=「おむつカート」を介して、感染が広がる危険があります。使用せざるを得ない場合は物品をできるだけ少なくし、汚染物をきちんと管理するとともに、一人のケアを行う毎に手指消毒とPPE(=個人防護具)の交換の必要があります。

 ■■【1-3.職員の更衣室で「三密」になり、職員間で感染が広がるリスクがある】

 ▼間違った事例=職員用の狭い更衣室で、出勤時や退勤時に多くの職員が同時に使用して、会話をしていた。

 ▽正しい事例=更衣室の使用時間をずらすなどし、同時に更衣室を使用する職員数が少なくなるようにする。更衣室には職員が会話をしないよう掲示したり、手指消毒薬の設置、出来る限り換気を行うなど、感染リスクを下げる工夫を行う。

 ◆解説=更衣室は「三密」の状態になりやすく、職員間の感染が広がるリスクがあります。更衣室内での会話の禁止、マスク着用の徹底、滞在時間の短縮化など「三密」にならないよう工夫し、手指衛生・換気など、基本的な感染対策を確実に行いましょう。

 ■■【1-4.消毒薬は、スプレー使用しない】

 ▼間違った事例=スプレーボトルに消毒薬(次亜塩素酸ナトリウムやアルコール)を入れ、噴霧して消毒している。

 ▽正しい事例=手すりやドアノブなど、汚染箇所を消毒する時は、環境クロス(「除菌クロス」「除菌洗浄ペーパー」などとも呼ばれ、洗浄成分や除菌成分を含浸させたシート)を用いて、清拭消毒する。

 ◆解説=消毒薬は噴霧ではなく、ふき取ることが重要です。環境清掃には、環境クロスの使用が望ましいです。どうしてもスプレーを使用する場合は、紙などに近距離で噴霧して清拭消毒しましょう。

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2.手指衛生=消毒薬は必要な場所に配置し、何か触ったら消毒を徹底する
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 ■■【2-1.手指消毒薬は必要な場所に配置する】

 ▼間違った事例=手指消毒薬が、必要な場所に配置されていない。動線上に手指消毒薬が無い、もしくは少ない。

 ▽正しい事例=必要な場所には消毒薬を設置する。施設入所者の誤飲のリスクにより、手指消毒薬の設置が困難な場合は、職員全員が個人持ち用のものを携帯する。

 ◆解説=手指消毒は、必要なタイミングで速やかに行えるようにすることが大切です。配置が必要な場所については、職員同士で話し合い、日常の業務や職員や、入所者の行動などを想定して設置場所を決めましょう。

 ポシェットタイプの手指消毒薬がある場合でも、職員全員が常備していないことがあるので、原則として必要な場所への設置を行ってください。職員の休憩所や更衣室など、見落としやすい場所もあるので注意しましょう。

 ■■【2-2.ポケット内の物に触ったら、手指消毒を徹底する】

 ▼間違った事例=職員が、ポケットに鍵や業務用のPHSなどを入れ、取り出して使用した際に、手指消毒がなされていなかった。

 ▽正しい事例=鍵やPHSなど、共有したり汚染する可能性があるものは、ポケットに入れず所定の場所で管理する。個人持ちの場合でも、汚染の可能性を考慮して、触った後の手指消毒を欠かさない。

 ◆解説=制服やエプロン等のポケットにいろいろな物を入れて、勤務中に取り出して使用することで、ポケットの汚染も起こりますので、必要のない物は極力ポケットに入れないようにしましょう。

 もし仕事上、持ち運ばないと不便な物がある場合は、消毒用のクロスなどで拭き取ってから使用します。ポケットから取り出した物がすでに汚染されている可能性もありますので、使用後は手指消毒を徹底しましょう。

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3.日用品=歯ブラシは消毒不要だが、個別管理を徹底する
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 ▼間違った事例=入所者の歯ブラシをまとめて、家庭用塩素系漂白剤や除菌水で洗浄し、まとめて保管している。

 ▽正しい事例=歯ブラシは、消毒せずに互いに接触しないように個別に管理する。

 ◆解説=歯ブラシは、消毒する必要はありません。体液による交差感染が起こる可能性があるので、やむを得ず集合して管理する場合、歯ブラシ同士が触れないよう十分に距離をとりましょう。

◇─[おわりに]─────────

 この「事例集」は今後、都内の高齢者施設・障害者施設・保健所等へ配布される予定ですが、以下のURLからもダウンロードできます。

 ■「高齢者施設感染対策事例集」URL(ただしアドレスは、弊紙にて短縮形に変換済み)
 https://bit.ly/3mlvjH0

 本紙の読者の皆さんが「第6波」に備えるためにも、また現在利用している介護サービス事業所の感染対策を評価する意味でもぜひ一度、ご覧頂くことをお薦めいたします。

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