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*****令和2年12月31日(木)第126号*****

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コロナ渦での高齢者施設に対し6割の人が「感染者が発生した場合の迅速な公表」を求める
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◇─[はじめに]─────────

 本日・大晦日の新型コロナ感染者が、国内全体で4千人を超え、東京単独でもついに千人を突破して1337人となり、いずれも過去最高を記録したことをマスコミが報じています。この中には、全国の病院や高齢者施設で発生したクラスターも含まれています。

 全国の高齢者施設では、それぞれに懸命の感染防止対策を講じているはずですが、それでもコロナの勢いは止まりません。弊紙では以前から「実際に高齢者施設に入所している方々は、どのような気持ちで過ごしているのか」が気になっていました。

 残念ながら、その疑問に100%応えてくれる調査結果には巡り合えていませんが12月17日に、主に住宅型有料老人ホームを運営するグッドタイムリビング(旧社名=オリックス・リビング)が、毎年実施している「介護に関する意識調査」の結果を発表しました。

 調査対象が「全国50代以上の男女」のため、必ずしも「高齢者施設の入所者」の考え方とは一致しない部分があるかも知れませんが、この世代は親がすでに入所していたり、入所を検討していたりする世代です。

 今回、本紙ではこの調査結果を読み解いて「全国50代以上の男女」が、コロナ渦で「高齢者施設」をどのように捉えているのか、探ってみました。今後、本紙の読者の皆さんが何らかの形で「高齢者施設」に関わる際の、ご参考になれば幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 今回、本紙で取り上げる「介護に関する意識調査」は、主に住宅型有料老人ホームを運営するグッドタイムリビング(東京都中央区)が、新型コロナウイルス感染症の影響による、高齢者施設に対する意識や行動の変化を探るために実施しました。

 対象は、全国50代以上の男女1,300名(男670名・女630名)で、期間は今年10月30日から11月2日まで。方法は、外部の調査会社の協力を得てWEBにより実施しました。同社ではこの調査を2008年から毎年実施しており、今回で13回目となります。

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6割の人が「感染者が発生した場合の迅速な公表」を求める
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オリックス調査結果「迅速な公表」 調査では、まず1問目で「高齢者施設」に求めることを質問しました。弊紙が注目したのは、第2位の回答に「感染者が発生した場合の迅速な公表」が挙がったことです=グラフ・グッドタイムリビングの発表資料より。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工。コロナ渦の現状では、感染者が出たことを病院や高齢者施設で公表している事例は少数です。

 ◆Q1=コロナ禍で、 高齢者施設にどのようなことを求めますか?(複数回答)

 □1.66%=厚生労働省が推奨する、基本的な感染症対策の徹底
 ■2.58%=感染者が発生した場合の迅速な公表
 □3.54%=施設職員全員のPCR検査の実施
 □4.43%=感染予防の指針やガイドラインの公表
 □5.23%=面会の中止など、外部環境との遮断
 □6.1%=その他

 本紙は以前、クラスターが発生した、ある介護施設を電話で取材しましたが、まだ感染者が次々と発生している中でも、当時の施設長はとても丁寧に応じてくれました。そして何と、施設のホームページ上で現在の感染者数や、施設の対応状況を全て公開していました。

 まだ第1波の頃でしたが、施設長は「逆に隠すことで、さらに不信感は広がる。私たち現場の職員の懸命の努力を『情報公開』することが、感染が収まった際に『再起』するのに必ず生きてくるはずだ」と語ってくれました。

 現実には、感染状況を「公開」することで風評被害を受けることもあり、感染者が発生した全ての施設に当てはまる対策方法ではないかも知れませんが、取材した当時は「この施設が『再起』できるよう、全力で応援したい」と強く感じました。

 このような経験から、本紙では「迅速な公表」はリスクが伴うことは事実ですが「メリットは必ずある」と考えており、この回答が全体の6割近くあったこともうなずけます。

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約半数が「対面での面会」を希望する一方、約4分の1が「ガラス越しでの面会」を望む
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 次に、コロナ渦における施設での面会方法について尋ねたところ、半数近く(45%)が「対面での面会」を希望しました。その一方で約4分の1(23%)が「ガラス越しでの面会」と回答し、同様に「オンライン」も約2割(19%)ありました。

 「ガラス越し」や「オンライン」と回答した方々も「本来は対面」を希望したのではないかと、推測します。施設経営者の方々にはぜひ「可能な限り『対面』に近い形での、面会方法を模索してもらいたい」と感じさせる結果でした。

 ◆Q2=高齢者施設に入居しているご家族への面会について、どのような形式を望みますか?(複数回答)高齢者施設に入居しているご家族がいない場合は、いることを想定してお答えください。

 ■1.45%=対面での面会(感染対策あり・時間制限等あり)
 ■2.23%=ガラス越しでの面会
 ■3.19%=オンラインでの面会
 □4.15%=対面での面会(制限なし)
 □5.14%=面会は希望しない
 □6.13%=電話での会話
 □7.1%=その他

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高齢者施設に対して、約7割が「施設で働く担い手の確保・育成」を希望
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 今回の調査で、本紙が最も「意外」と感じたのが「高齢者施設に必要だと考えること」の問いに、約7割(69%)の方々が「施設で働く担い手の確保・育成」と回答したことです。これ以上の設問がないために、真意は推測しかできません。

 本紙が思い浮かんだのは「介護業界が慢性的な人手不足」であることが世間にも広く知れ渡っている、ということです。これが「自分の親が施設に入所する時に、職員から十分に対応してもらえるのだろうか?」等との疑問が思い浮かんでいるとしたら……。

 ◆Q3=超高齢社会の中で今後、 高齢者施設にどのようなことが必要だと考えますか?(複数回答)

 ■1.69%=施設で働く担い手の確保・育成
 □2.60%=介護の品質の維持・向上
 □3.52%=高齢者施設の種類やサービス内容の分かりやすい提示
 □4.35%=地域と一体となった施設づくり
 □5.34%=ホスピタリティの向上
 □6.18%=海外人材など、幅広い人材の登用
 □7.1%=その他

◇─[おわりに]─────────

 残念ながら、現状では「第3波」はまだ、その勢いが衰えそうにありません。今年を振り返っても、日本介護新聞では配信した本紙(エンドユーザ─版)とビジネス版のほとんどが「コロナ関連」の記事でした。

 さらに言及すれば、その記事の大半が「感染拡大」に対して警鐘を鳴らす内容でした。そんな中でも、今回の記事でも取り上げた、クラスターが起きた介護施設の施設長を取材した際は、心の底から「応援したい」と感じました。

 今回の調査結果も大変興味深いものでしたが、同様にコロナ渦での「介護に関する意識調査」が行われる際にはぜひ、現場で奮闘する職員の「生の声」も聞いてみたいですし、それを本紙読者の皆さんにお届けしたいと思います。

 最後にこの1年間、本紙をご愛読頂きました読者の皆様に、心から感謝申し上げます。来年も、例えコロナ渦でも「最適な介護を、自分で選ぶ」ために有益となる情報を、1本でも多く配信することをお約束して、年末のご挨拶とさせて頂きます。

 今年1年間、ご愛顧いただき誠にありがとうございました。

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