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*****令和2年4月30日(木)第110号*****

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新型コロナ対策「地域内協力体制の構築が必要」
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◇─[はじめに]─────────

 昨日、TBSの夜のニュース番組を観ていたら、新型コロナの感染拡大防止策に関して、訪問看護の業界団体の代表が、司会者から「今、必要なことは何か?」と問われて「地域での協力体制だ」と強調していました。

 現実は、各事業者とも「自分のところだけで精一杯だ」というのが本音でしょう。しかし、専門家から「医療崩壊」の事例がいくつか指摘されている現在、いつ「介護崩壊」が起きてもおかしくない段階にまで、新型コロナの感染拡大は進んでいます。

 たとえ困難でも、地域での協力体制を構築しないと、地場に根差した医療・介護事業者は、事業を継続していくことは困難だ──そんな提言と、それに関わる要望を、日本慢性期医療協会(日慢協)は4月24日に、厚労省に宛てて提出しました。

 これを読むと、高齢患者を多く抱える日慢協の皆さんが、なぜ「地域内協力体制の構築が必要」と訴えたのか、経緯と理由がよくわかります。今回は、新型コロナ拡大防止の「課題解決の糸口」として、日慢協が公表した「要望書」の内容をご紹介したいと思います。

 日本介護新聞発行人

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「慢性期病院」は現在、運営に支障をきたしている
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武久会長b ※注=以下は、日慢協が武久洋三会長=画像=名で、厚労省の加藤勝信大臣と吉田学医政局長に宛てて提出した「要望書」の内容を、読者の皆さんが理解しやすいように、本紙が一部の文言を変更して記事として作成しましたので、あらかじめお断りしておきます。

 私たち、主に慢性期医療に従事する医療機関は、感染症指定医療機関等(以下「指定機関」)が新型コロナウイルス感染症患者への治療に集中して当たることができるよう、「指定機関」に入院中の新型コロナ感染症以外の、慢性期患者の受け入れを行ってきた。

 これまでは側面からのサポートに務めてきたが、新型コロナはすでに市中に蔓延する状態に近づいている。当会の役員にヒアリングしたところでは、慢性期型地城多機能病院(以下「慢性期病院」)であっても、新型コロナの疑いがある発熱者の外来受診も行ってきた。

 「慢性期病院」の入院患者はほとんどが高齢者であり、複数の疾患を有している。これらの患者が新型コロナを罹患すれば、重症化のリスクが非常に高いことは明らかだ。また病院内は、感染症対応の専門的訓練を受けていないスタッフが多い。

 さらに、マスク・ゴーグル・防護服などの資材を十分には持ち合わせていない。しかし、医療従事者として、どのような状況であろうと最善を尽くし、診療や患者のケアを行うのは当然のことと考える。

 そこで是非とも、下記の5点についてもご配慮いただき、新型コロナ感染症対策を遅滞なく進めていただければ有難い。私たちの医療現場でも、新型コロナの拡大に関連して、すでに外来及び入院患者数の大幅な減少も見られ、収支バランスが崩れている。

 病院の運営にも支障をきたし、今後の医療を継続していくには危機的状況に陥りつつある。地域医療を守るために引き続き、しかるべき役割を果たし、厚生労働省の皆様とともに奮迅の努力を惜しまずに致してまいる所存です。

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地域医療を守るためにも「指定機関」へのスムーズな移送を
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 【1、新型コロナ感染者の入院先の的確な調整と確保】

 「慢性期病院」の運営を主に行っている当協会は、基本的には新型コロナの疑いがある発熱者にも、隔離した外来診察室を設けるなどの対応を行い、地域医療が損なわれないように努めているが、外来患者や入院患者に新型コロナの患者が混在してきている可能性も高い。

 PCR検査の体制は整備されてきているが、さらに速やかな検査体制を整え、新型コロナ、あるいはその疑いが強い場合には「指定機関」にスムーズに移送できるようご配慮をお願いしたい。

 【2、「慢性期病院」における資材の確保や報酬上の支援】

 「慢性期病院」は、新型コロナの対応では「第一線」ではない。しかし、地域医療の中心として住民の医療的管理を行うためには今後、新型コロナにも関わっていくことは必須の業務になると思われるので、防護資材の充足と、報酬上においてのご配慮をお願いしたい。

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現場の医師・看護師・介護士・PT等に「感染リスク手当」を
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 【3、「慢性期病院」で新型コロナ感染者が発生した場合】

 「慢性期病院」は、医師・看護師・介護士・リハビリ療法士など、様々な職員が現場でチーム医療を提供している。どの職種についても、人数的な余裕のない中で感染症患者が発生した場合、濃厚接触者は自宅待機の措置をとることになる。

 これにより、一時的に職員数が減少することになる。施設基準等に関しては、すでに臨時的措置が示されているが、さらなるご配慮をお願いするとともに、職員の感染リスクに関する手当等についてもご検討をお願いしたい。

 また、院内での感染拡大を防ぐため、感染制御やゾーニングに関する専門家のご派遣等についてもご配慮をお願いしたい。

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感染症患者の集中化、組織を横断しての人材派遣が必要
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 【4、新型コロナ感染症から治癒された患者への対応】

 高齢者が新型コロナから治癒した場合は、要介護度の悪化や、廃用症候群(=病気やけがにより安静にすることで、体を動かす時間・強さが減り、体や精神にさまざまな不都合な変化が起こった状態)などをきたしていることも予想される。

 「指定機関」から退院される場合は、患者が在宅等に復帰できるよう、その状態を判断し、「慢性期病院」あるいは在宅でのリハビリテーションにスムーズに移行できるように協力していく所存だ。感染後の患者の受け入れや、報酬上のご配慮をお願いしたい。

 【5、地域内協力体制の構築】

 新型コロナは、終息までには年単位の時間がかかることが予想される。地域内で、患者を診る体制を整えることが急務であり「指定機関」と「慢性期病院」さらに介護保険施設・在宅支援サービス等との情報共有・連携体制を構築していくことが必要と思われる。

 感染症患者の集中化、組織を横断しての人材派遣などがなければ特に小規模の、地域に密着した医療機関が運営を継続することは困難だ。慢性期医療に関する分野では「慢性期病院」がその軸となり、協力してまいります。

 以上、地域医療が崩壊することのないようご配慮をお願い致します。

◇─[おわりに]─────────

 日慢協が「要望書」で指摘しているのは、医療機関同士、または医療・介護を含めた様々な職種間の連携を「地域で構築しなければ新型コロナの感染拡大には対応できない」ことだと、弊紙では受け止めました。

 医療と介護の連携は全国各地で、その「協議の場」はすでに設けられていると思いますが、有効的に稼働している事例はまだまだ少ないのが現実です。しかし、ここで手をこまねいていては、本当に「地域の医療と介護」は崩壊しかねません。

 厚労省にはぜひ、この日慢協の「要望」が実現するため、現場でキチンと稼働させるために、各自治体へ具体策を早急に通達してもらいたいと思います。この「地域内協力体制」が実現すれば間違いなく、多くの尊い命を救えるはずです。

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