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*****令和4年5月29日(日)第145号*****

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コロナ後遺症「オミクロン株では『せき』『だるさ』が、デルタ株以前より高い割合に…
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◇─[はじめに]─────────

 本紙ではこれまで、東京・世田谷区が時期を分けて2回調査した「新型コロナウイルス感染症後遺症アンケート」の結果と、この2回の結果を専門家が分析した内容を、計3回にわたってご紹介してきました。

 第1回目は、昨年の本紙12月25日号「コロナ療養後、120日が経過した時点の『後遺症の保有率』は、40代から70代で4割以上」として、第2回目は、今年の本紙3月30日号「コロナに感染すると、高い割合で後遺症が確認され、変異株の方がより高い割合になる」。

 そして本紙前号(4月24日号)では、この世田谷区の2回の調査結果を、東京大学の伊東乾准教授が解析した内容の要旨「コロナは『風邪』ではない。『風邪』に後遺症はない。コロナは高率で後遺症リスク有り」を配信しました。

 伊東准教授は、世田谷区の記者会見で「後遺症の研究は、世界や日本でもまだ進んでおらず、これから様々なデータが出てくると思う。今回、私が発表した内容はあくまで『世田谷区に限定した症状』で、日本全国で共通したものとは言えない」

 「コロナに感染した後の後遺症は、これから起きてくる症状だ。まだ、治療法すら確立しておらず今後、多くの研究機関が様々な調査結果を発表することで、徐々に『後遺症』が明らかになってくると思う」等と発言しました。

 現在、国内の新型コロナの感染動向は、東京都が毎日午後4時45分に発表する「都内の新規感染者数と、前週の同じ曜日との比較」が「標準的な指標」となっています。またその詳細は、新型コロナ感染症モニタリング会議(都専門家会議)が分析しています。

東京都モニタリング会議「後遺症」分析結果 この都専門家会議が5月26日に開かれ、都立・公社病院が設置している「コロナ後遺症相談窓口」に寄せられた相談内容を、分析した結果を公表しました。主に、オミクロン株(第6波)の後遺症の状況を、デルタ株(第5波)以前の後遺症と比較した内容となっています=画像・東京都HPより。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工

 世田谷区の調査は、デルタ株(第5波)までの後遺症を分析していました。そこで今回、本紙ではこのオミクロン株の後遺症を分析した都専門家会議の調査結果を、ご紹介しようと思います。

 これら最新の調査結果を知ることで、読者の皆さんにはどうか、新型コロナの感染に警戒感を持って頂くとともに、新型コロナの感染と、その後遺症を「正しく、おそれる」心構えを持って頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 【調査の概要】

 ■感染拡大の「波」=都専門家会議では、新型コロナの感染が拡大した時期の「波」を、次のように定義しています。

 ▽第1波=令和2年4月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」
 ▽第2波=令和2年8月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」
 ▽第3波=令和3年1月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」
 ▽第4波=令和3年5月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」
 ▽第5波=令和3年8月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」
 ▼第6波=令和4年2月に、新規陽性者数の7日間平均がピークを迎えた「波」

 今回の調査は都専門家会議が、都立・公社病院の「コロナ後遺症相談窓口」に寄せられた相談データをもとに、主にオミクロン株(=第6波)の感染者の後遺症について、デルタ株(=第5波)以前の感染者の後遺症と比較して、その違い等を分析しています。

 ■相談実績の概況=都立・公社病院の「コロナ後遺症相談窓口」では、次のような相談実績がありました。

 ▼相談件数=7,258件
 ▼相談受付期間=令和3年3月30日~令和4年4月30日)
 ▽相談受付病院=都立・公社病院の計8病院
 ▼相談対象者=新型コロナ感染症と診断(PCR検査等で陽性)されてから、何らかの症状(=後遺症)がある人
 ▽相談受付方法=8病院の「患者支援センター」の看護師等が、電話により相談を受け付けた。1件当たりの平均相談時間は約10分。

 都専門家会議は「電話相談で相談者から聞き取った情報であるため、相談者の情報の全てを、正確に把握できていない可能性があることに留意が必要」と述べています。

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オミクロン株(第6波)が拡大した今年1月以降に相談件数が急増し、いまだ高水準で推移
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 今回の調査は「後遺症」の分析であるため、新型コロナの新規感染者数の増加の「波」が来た後に、相談件数も増加の「波」を迎えます。特にオミクロン株による感染拡大では、今年1月以降に相談件数が急増しました。

 そして相談件数がピークを迎えた週「今年2月28日~3月6日」では、243件の相談がありました。ちなみに過去、相談件数が最も多かった週は「昨年9月13日~9月19日」で332件でした。この時はデルタ株(第5波)の影響を受けています。

 今回のオミクロン株(第6波)も、前回のデルタ株(第5波)の時と同様に、新規陽性者数の減少とともに相談件数も減少傾向ですが、都専門家会議は「今回のオミクロン株では相談件数は減少しているが、いまだ高い水準で推移している」と分析しています。

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「基礎疾患の有無」また「コロナ感染時の重症度」に関係なく、後遺症は発症する
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 今回の都専門家会議の分析結果は、オミクロン株(第6波)の後遺症と思われる相談内容を、デルタ株(第5波)以前の相談内容と比較しました。これを、相談者の基本情報(年齢構成・基礎疾患の有無・コロナ感染時の重症度)で比べると、次のようになりました。

 ■年齢構成=オミクロン株と、デルタ株以前で、顕著な差は見られなかった。両方とも相談者の年齢構成は、20代から50代までは各年代が15%~25%で、10代と60代が5%、70代以上が3~4%だった。

 ■既往症(基礎疾患を含む)の有無=オミクロン株も、デルタ株以前も「既往症なし」が74~76%。「既往症あり」が24~26%で、「既往症なし」でも後遺症を訴えた人が全体の4分の3を占めた。この点は、世田谷区の調査結果とほぼ同じ。

 ■コロナ感染時の重症度=「軽症以下」と「中等症以上=コロナ発症時に、肺炎診断・酸素投与・抗ウイルス薬投与・ステロイド薬投与・人工呼吸器・ECMO[エクモ]の診断や治療を1つ以上受けた者。ただし、相談者の自己申告による」に分けると次のようになった。

 ▼軽症以下=オミクロン株97%・デルタ株以前86%
 ▽中等症以上=オミクロン株3%・デルタ株以前14%

 これは、世田谷区の調査結果の分析内容(ただしデルタ株以前の感染による後遺症)とほぼ同じで「基礎疾患がなくても、後遺症は発症する」「変異株の種類にかかわらず、たとえ『軽症以下』でも、後遺症は発症する」ことを、あらためて裏付けた形となりました。

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症状別では、オミクロン株は「せき」「だるさ」が、デルタ株以前より高い割合を示す
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 相談者が訴えた症状を分析すると、オミクロン株では「せき」が38.6%と最も高い割合を示し、デルタ株以前の22.2%%から大きく上昇しました。次いで「だるさ」が34.0%と2番目に高い割合を示し、こちらもデルタ株以前の26.0%から上昇しました。

 その一方で、オミクロン株では「味覚障害」「嗅覚障害」「脱毛」は、デルタ株以前から大きく減少しました。ただし都専門家会議は「 オミクロン株のデータは、陽性判明から3ヶ月未満の相談がほとんどだ」

 「このため3ヶ月以降に、これらの症状が新たに出現する可能性もあることに留意が必要だ」と注釈しています。また、これらの症状を年代別にみると「年代による顕著な差異はみられなかった」

 「どの症状も、20歳代以下の若い年代から60歳代以上まで、幅広い年代から症状の訴えがみられる」と分析しています。また「発熱・微熱」「呼吸困難」「胸痛」「しびれ」「抑うつ」は、デルタ株以前の方が、オミクロン株よりも少しだけ高い割合を示しました。

 これらの調査結果は、以下通りです。

 【オミクロン株の方が、デルタ株以前より高い割合を示した後遺症】
 ▼せき=オミクロン株38.6%、デルタ株以前22.2%
 ▼だるさ=オミクロン株34.0%、デルタ株以前26.0%

 【デルタ株以前の方が、オミクロン株より高い割合を示した後遺症】
 ▽味覚障害=オミクロン株10.6%、デルタ株以前23.3%
 ▽嗅覚障害=オミクロン株9.5%、デルタ株以前30.4%
 ▽脱毛=オミクロン株0.8%、デルタ株以前9.4%

 【デルタ株以前の方が、オミクロン株よりも少し高い割合を示した後遺症】
 ▽発熱・微熱=オミクロン株17.4%、デルタ株以前19.1%
 ▽呼吸困難=オミクロン株11.3%、デルタ株以前15.1%
 ▽胸痛=オミクロン株3.9%、デルタ株以前6.3%
 ▽しびれ=オミクロン株1.4%、デルタ株以前2.9%
 ▽抑うつ(よくうつ・気分が落ち込み活動を嫌っている状況)=オミクロン株1.6%、デルタ株以前1.9%

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後遺症を予防する観点からも、コロナに感染しないよう、ワクチン接種の積極的な検討を
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 これらの分析結果をまとめて、都専門家会議は次の3点を結論づけています。

 ■1.オミクロン株の感染者は、後遺症について、年齢や既往症の有無、コロナ発症時の重症度などに関わらず、様々な相談を寄せている。

 ■2.オミクロン株における症状の割合について、デルタ株以前のデータと比較すると「せき」「だるさ」が増加して「味覚・嗅覚障害」「脱毛」が減少している。

 ■3.後遺症を予防する観点からも、コロナに感染しないよう、日々の基本的な感染予防対策を行うとともに、ワクチン接種の積極的な検討をお願いしたい。

 さらに、都専門家会議は「都では、後遺症の症状・体験談・データ・相談窓口等を紹介する『後遺症リーフレット』を作成し、昨年6月からホームページ上で公開している」

 「厚生労働省も、医療従事者等を対象とした後遺症診療のアプローチやフォローアップ方法についてとりまとめた手引き「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊・罹患後症状のマネジメント」(第1版)を、今年4月28日に作成している」等と紹介しています。

◇─[おわりに]─────────

 このところの、新型コロナの新規感染者数が全国的に「減少傾向」にあることを受け、政府では「マスクを外しても良い場面」等について情報発信しています。確かに、これから気候的に蒸し暑くなる時期に、そういった「配慮」も必要なのかも知れません。

 しかし「後遺症に苦しまないためにも、新型コロナの感染予防が必要」との観点から、これらの施策が考えられているのか……と言えば、正直なところ疑問が残ります。やはりまず、厚労省が一般の方向けに「後遺症」についての情報発信をすべきだと思います。

 「後遺症」については、例えば変異株の種類により、その主な症状が異なる等、まだまだ未知の部分が多いと思われますが、最終的には一般の方々が「新型コロナの感染と後遺症を、正しくおそれる」ための情報が今後も必要になります。

 弊紙も今後、この点に注目して「後遺症」に関する様々な調査結果や分析内容を継続して、本紙で取り上げていきたいと思います。 

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