日本介護新聞バックナンバー

弊紙は「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」を目指し、日本最大級のメルマガサイト「まぐまぐ!」を利用して配信しています。平成28年12月1日に創刊し、月に約3回発行しております。ここではバックナンバーを掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。無料で購読できますので、ぜひ一度「まぐまぐ!」からお申込みを頂ければ幸いです。私たちは「初心者の視点」を忘れず、読者との「対話」を心がけ、読者の皆さんが最適な介護を選ぶのに役立つ「提案」をいたします。https://www.mag2.com/m/0001677525.html

2020年10月

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和2年10月31日(土)第123号*****

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介護と医療の連携「どのように医師と付き合って行けば良いのか?」連載第3回目
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連載第3回目画像 ◆連載第2回目から続く。画像は、セミナーで登壇した産業医科大学の田中良哉教授が、リウマチの症状を説明するために使用したパワーポイント。

※注=講演で登壇した皆さんは、薬剤の実名を挙げて説明しましたが弊紙の読者には、馴染みがない難しい名称の薬剤よりも、その効用等の説明の方が重要と考え、記事では本紙の文責で敢えて、薬剤の名称を「代表的な薬剤」「ある治療」等の表現に変更しました。

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「起こるであろう副作用」を察知するため、出来るだけ早く医師に症状を伝える
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 「リウマチセミナー」では、主催者が発表したアンケート結果に対して、愛知県医療療育総合センターの石黒直樹総長が専門家としてコメントしました。この中で石黒総長は「医師と患者のコミュニケーションの重要性」を、たびたび指摘しました。

 弊紙ではこれを「高齢者の立場」から、どのように実践すれば良いのか、石黒総長に質問しました。質疑応答の内容は、次の通りです。

 ▽質問・本紙=「医師と患者がコミュニケーションを取る」との視点から、患者が医師に対して「このような点は、遠慮せずに明確に主張した方が良い」という点があれば、教えて下さい。

 ▼回答・石黒=もちろん「治療の効果」は大切ですが、最も重要なのは「副作用」です。これを「できるだけ、早く把握する」ことがポイントです。具体的には、ある治療を行った場合に「起こりやすい副作用」「起こるであろう副作用」が該当します。

 ▼「起こるであろう副作用」というのは、事前に把握ができます。そしてそれを正しく、医師は患者さんに伝える必要があります。例えば、リウマチ治療のある代表的な薬剤は、帯状疱疹(たいじょうほうしん)という副作用を持っています。

 ▼これは、日本人やアジア人に多く起こるというデータがすでに出ていますので、そのような症状が「起こり始めの時」に、患者さんは症状を医師に正しく伝えることが肝心です。「最近、何かおかしい」とか、あいまいであっても的確に情報を伝えることです。

 ▼そのためには、薬剤について知っていなければなりません。そのようなことも含めて、本日の講演で話題になったように、医師と患者さんが、薬剤について良い面も悪い面も正しく理解し、十分な知識を持つことの重要性が本日の講演で確認されたと思っています。

 ▼治療が高度化すればするほど、効果は期待できます。でもやはり「万全」がない以上は、このような(例えば薬剤の副作用という)問題に互いに気を付け、互いが知識を持つ必要がある、ということです。

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注意は必要だが「高齢者だから使えない」という薬は、ない
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 今回の「リウマチセミナー」で登壇した、産業医科大学の田中良哉教授は、リウマチ治療のこれまでの歴史や最新の治療法等について講演しました。その中で効果の高い薬剤は、副作用の心配も高まるのでは……と弊紙は感じ、この点を田中教授に質問しました。

 ▽質問・本紙=本日の講演では、関節リウマチの最新の治療法の紹介がありましたが、これらは比較的若い方を対象にしているのではないかと感じましたが、同じ治療法を75歳以上の後期高齢者にも、そのまま適用できるのでしょうか?

 ▽特に患者が後期高齢者だと、効き目が強い薬であればあるほど、副作用も心配になりますが……。

 ▼回答・田中=指摘通り、最新の薬は(効果も強いので)高齢者には気を付けて使用しなければなりませんし、私たちも十分に注意をはらっています。しかし「高齢者だから使えない」という薬は、ありません。

 ▼まず、スクリーニング(特定の条件などに照らして、複数ある対象の中から、条件に合致する対象を選別すること)をキチンとやることです。その後に定期的にモニタリング(観察・測定・検査など)を行うことが大切です。

 ▼そうすれば、例え最新の薬であっても、高齢者にも十分に使用できます。

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今までの人生で積み上げてきた経験から「出来る・出来ない」を判断する
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 今回のセミナーでは、リウマチ患者の立場から「日本リウマチ友の会」の長谷川三枝子会長が「治療目標達成のための医師・患者コミュニケーション」について意見を述べました。同会の会員にも高齢者の方が多いのではと弊紙は考え、これに関して質問しました。

 ▽質問・本紙=75歳以上の後期高齢者が、関節リウマチの治療に向かい合う際の留意点やアドバイスがあれば教えて下さい。

 ▼回答・長谷川=私たちの「日本リウマチ友の会」の会員も高齢化していますが、関節リウマチの治療にキチンと向き合っている会員もおり、なかには90歳を過ぎても「友の会」が依頼した実態調査に、キチンと回答して下さる会員の方もおられます。

 ▼それは、高齢になったからむしろ緊張して、今まで生活してきた延長で80代や90代を迎えられているからでは、とも思います。もちろん、高齢になればいろいろな障がいが出てきますが、それなりに、ご自分の年相応に病気を受け入れておられると思います。

 ▼その上で「出来ること」「出来ないこと」を認識し、周りとの兼ね合いの中で生活をしていくことが重要で、今まで積み上げてきたご自身の経験から(生活上の動作などが)「出来る」という選択をするのが一番良いのかなと、私は思います。

◇─[おわりに]─────────

 今回の連載で、読者の皆さんが医師と関わる際のヒントがつかめたら幸いです。これも以前に本紙で書いた記憶があるのですが、弊紙発行人がある地方都市で、介護保険の事業計画策定に携わっていた際に、他のメンバーは全て「有識者」でした。

 地元の医師会の会長だったり、薬剤師会の代表者だったり、通所介護事業所の所長だったり、大学教授だったり……。そこでふと疑問に思ったのが「何でこのメンバーの中に、介護保険サービスを利用しているユーザーがいないのだろう?」ということでした。

 その疑問を会議の席でぶつけると、皆さんは「そうですね」とうなずくものの、結局は「黙殺」されてしまいました。今回の連載を通して、この時の出来事を思い出しました。今回のテーマは「どのように医師と付き合って行けば良いのか?」でした。

 これは介護サービスでも同様のことが言えるのでは、と思います。介護サービス利用者にとって「最適な介護」とは、サービス事業者から一方的に施されるだけでなく、利用者側も意見を述べて、互いが協力することで「最適な介護」が実現できるのでは、と思いました。

 今後、本紙でもそのような事例を見つけて、ぜひ取り上げてみたいと思います。

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(C)2020 日本介護新聞

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*****令和2年10月30日(金)第122号*****

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「高齢者は、どのように医師と付き合って行けば良いのか?」連載第2回目
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連載第2回目使用画像 ◆連載第1回目から続く。画像は「リウマチセミナー」で登壇した田中良哉・産業医科大学教授が、講演で使用した資料で、関節リウマチの概要を説明した内容の一部。

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「治療効果を上げるためには医師と患者、お互いの理解が必要」
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 【1人目の登壇者・キタヤマさん(64歳女性)の講演内容要旨・後編】

 ▽ただ、診察のたびに毎回話し合っている、というものではありません。私の場合は「生物学的製剤」の投与が、1週間に2回のところを今、ほぼ5日に1度のペースにして、これも私の体調に問題がないのであれば「もう少し間隔を空けても良い」と言われてします。

 ▽これも主治医の先生との共通の認識で「状態が良ければ(薬の投与を)スキップしても良い」と話し合っているので「生物学的製剤」の卒業への階段を、少しずつ上っている感じは持っています。

 ▽主治医の先生とのコミュニケーションで日頃から気を付けていることですが、今は2ヶ月に1度の診察なので、その間は私の体調も変化します。その当日の体調だけでなく「こういう体調の時もあった」ことを、忘れずに先生に話すことが大事だと思います。

 ▽私の主治医の先生は、シッカリと私の言うことを受け止めて下さいますし、リウマチと直接関係がないかも知れない状態や症状でも、一応お話しするようにしています。そうすると、必要があれば他の診療科への紹介状も書いて下さいます。

 ▽先日も、治らずにしつこかった湿疹(しっしん)の症状も好転した、という経験もありました。そして主治医に伝えるポイントとしては「あれこれ考えすぎないで、率直に話すこと」だと思います。

 ▽自分が使っている薬や、副作用に関しても、手術のことにしても、自分が聞きたいことは遠慮せず、遠回しに言わずに、率直に伺うことが大事だと思います。ただ、外来は(先生の)時間の制約もあるので手短に、伺いたい内容を箇条書きしてみるのも良いと思います。

 ▽何年か前に(リウマチ友の会の)支部の企画で「上手な医者のかかり方」というテーマで、先生と患者でディスカッションしたことがありました。その時に「伝えたいことはメモして準備」「より良い関係づくりには、患者さん側にも責任がありますよ」

 ▽「その後の変化もその都度、伝える努力をしましょう」「納得できない時は、何度でも質問しましょう」「治療効果を上げるためには、お互いの理解が必要」等ということを話し合って、お互いに確認したことがあります。

 ▽私は現在「リウマチ友の会」の活動にも携わっているのですが、リウマチの知識をアップするために、関節リウマチ全般についての講演を聞いたり、相談内容に目を通したりしています。とても役に立つので「友の会」のテーマ相談などに役立てています。

 ▽あと、病院や製薬会社の医療講演会に出かけたり、そこで頂いた資料なども「友の会」の活動に活用しています。今後も医療の進歩で、より良い薬も出てきます。それまで今後も先生と二人三脚で、リウマチと向き合って行こうと思います。

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先生が私の顔を見て「自殺するんじゃないよ」と言ってくれた
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 【2人目の登壇者・オオノさん(60歳女性)の講演内容要旨】

 ▼私は今60歳で、リウマチの発病は23歳の時です。最初に症状が出たのは、仕事で残業が続いた時です。風邪で高熱を出し、電卓を打つ親指の付け根が痛くなり、電卓が打てなくなりました。

 ▼その後すぐに両膝に水が溜まるようになり、病院でリウマチとの診断を受けました。その当時は病院のことも知らず、病気のことも知らず「リウマチは、年配の方々がなるものだからたいしたことはない」と、本当に簡単に考えていました。

 ▼まさか、こんなに全身の関節に痛みが出る、つらい病気だとは思ってもいませんでした。そして2~3ヶ月すると、今度は全身に、肩や手首や指などに痛みが出て、もう起き上がることもつらい日々が続き、ついには階段が上がれない状態になりました。

 ▼5分も歩けないし、症状がどんどん悪化して、朝目覚めた時に「今日は起き上がれるだろうか?」「明日は歩けるだろうか?」と毎日、怖かった思い出があります。そしてついには仕事にも行けなくなり、1年半休職いたしました。

 ▼しかしその時の主治医の先生には、痛みや体のつらさ、それ以上に心のつらさをぶつけたのですが、本当に良く対応して下さって感謝しております。今でも忘れられないのですが、先生が私の顔を見て「自殺するんじゃないよ」と言ってくれたことがありました。

 ▼「ああ、私はそれほど暗い顔をしていたんだ」と、その時に気付きました。そして復職をしましたが、やっぱり仕事は無理で、その半年後に退職しました。そして26歳で結婚し、子どもも二人もうけることができました。

 ▼当時は、リウマチの患者さんは子どもを諦める方が多かったのですが、私は本当に幸運だったと思っています。しかし、妊娠中は(リウマチの)薬を飲むことができなかったので、薬を断ちました。

 ▼出産後もミルクを飲ませることもなく、すぐに薬を飲み始めましたがその後、急に症状が悪化しました。子育ても痛みとの闘いで、夫や親にずいぶん助けてもらいました。その間に手足の変形がひどくなって、昔の元気な私の姿を知っている人とは会えませんでした。

 ▼変形してしまった体を、見せることができませんでした。おそらく友だちの方は平気なのでしょうが、私の気持ちとして何と言うか……、障がいを持った私の姿を見せたくないという気持ちが、ずいぶん長く続きました。

 ▼それで約10年、知人とは会いませんでしたが、その間に障がい者も世の中で活躍するようになり、私も今の姿を見せる勇気が出て、この病気の体を友だちに見せました。みんな最初はびっくりしたのですが、以前の通りに接してくれて、本当に涙が出る思いでした。

 ▼やっと、自分自身でこの障がいを受け入れることが出来たのだと、その時に思いました。この(リウマチという)病気は、本当に大変です。話しは変わりますが、私は病院に行くのが大好きです。

 ▼午前と午後に予約を入れて、朝から夕方まで病院にいても全く苦になりません。それは病院が安心できる空間で、病院にいるとホッとするんですね。なぜかと言うと、痛い時とかつらい時に病院に行けば、主治医の先生が検査をしてくれて、良い薬を出してくれます。

 ▼そして、体を楽にしてくれる。病院は、全ての患者さんにとって、安心できる場所になっていると思います。それにはやはり、主治医の先生との関係が大きいのではないでしょうか。私は今まで、4人の主治医の先生が診てくれました。

 ▼全ての先生に気軽に質問して、先生の方も何でも答えて下さったので、病院が大好きなのだと思います。私は今「友の会」の活動に関わらせて頂き、リウマチの患者さんと触れ合う機会が多くあります。

 ▼患者さん側から良く「先生が話しを聞いてくれない」という相談を受けますが、その方々の話しの多くは、私が聞いていて「何が言いたいのか、わからない」「同じことを何度も繰り返して、話しにまとまりがない」「話しが長い」等の場合が多いのです。

 ▼私は先生方に「患者さんの話しを聞いてあげて下さい」とお願いすることがよくあるのですが、実は私たち患者の方も、診療の受け方を変えないといけないと思っています。「賢い受け方」として、聞きたいことはメモに書けばとても便利です。

 ▼「そうすると短い時間に、先生にいくつも質問して話しが聞けます」と、患者さんに伝えるようにしています。これからは私たち患者も、全て主治医に甘えるのではなく、診察の受け方を自分たちで工夫していかなければ、と思っています。

 ▼私は見ての通り、手も足も、とにかく変形が凄いんですね。出来ないことが、たくさんあります。特に手が変形しているので、物を握ったり持ったり、例えば包丁を持つことが出来にくくなっています。

 ▼でも今は本当に便利で、例えばカット野菜にしてもたくさん種類が売られていて、昔は「こんなものは買えないわ」と思っていたのですが、今はどんどん活用しています。そしてありがたいことに、フライパンや鍋も軽量のものがたくさん出ています。

 ▼私のように力が出ない、障がいのある人たちには「やさしい世の中」になっているのではないでしょうか。掃除では、掃除機はかけられるのですが膝が悪いので、どうしてもお風呂掃除などのかがむ動作がある作業は、出来ないです。

 ▼だからお風呂掃除は、主人にやってもらっています。私の願いは、この先もずっと今の状態が続くことです。「自分のことは、自分で出来る」「電車やバスで、一人で外出が出来る」──この生活を維持することです。

 ▼おそらく今後、手術もすることになると思いますが、主治医の先生と相談しながら、やっていきたいと思っています。お薬にしても、昔はステロイドしかなくて、その当時の私の症状として1ヶ月に2回、必ず39度の高熱が出て、3日間寝たきりになりました。

 ▼この時は、寝返りがうてない。布団もかけられない。トイレにも起きられない。トイレに行く時は抱えてもらって、座らせてもらって、服の上げ下げをしてもらって。この時はカーペットの、わずか1~2センチの段差ですら、上がれません。

 ▼こんな状態が、3日も続きます。不思議なことに、この3日が過ぎるとスーッと熱が下がって、元の動ける体に戻るのです。この時は、本当につらい思いをしていました。その後に良いお薬が出てきました。

 ▼7年前に「生物学的製剤」を使い始めてから、症状が劇的に良くなりまして、寝込むことが一切なくなりました。本当に、医療の進歩に感謝しています。今日は私の講演を聞いて頂き、ありがとうございました。

 ◆以下、連載第3回目に続く。

◇─[おわりに]─────────

 オオノさんは、医師の診療の「賢い受け方」を提唱しています。これが医師側の意見でしたら「その前に、患者の言うことをキチンと聞いて下さいよ」と文句の一つも言いたくなりますが、37年間もリウマチと向かい合っているオオノさんの発言だけに説得力があります。

 次回の連載第3回目では、セミナーで登壇した医師2名と、同じく登壇した「日本リウマチ友の会」の長谷川三枝子会長に、それぞれ講演内容に対して「高齢者」の視点から、日本介護新聞が質問を投げかけました。その質疑応答をぜひ、ご一読頂きたいと思います。

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「高齢者は、どのように医師と付き合って行けば良いのか?」連載第1回目
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◇─[はじめに]─────────

 過去にも弊紙で何度か触れていますが、弊紙発行人は以前に、ある地方都市で介護保険の事業計画の策定に携わった経験があります。その時に最も痛感したのが「介護と医療の連携の難しさ」です。

 結論から言えば「その地域で、介護事業に対して理解のある医師がいないと、連携事業はなかなか進展しない」と認識しました。「介護と医療の連携」は二つの分野で「利用者に関する情報をどのように共有し、介護と医療を切れ目なく実行するか」が焦点になります。

 行政が取り組んでいる「介護と医療の連携」は、その情報共有のやり方など「ハード面」が主体になると思います。これに対し、介護サービス利用者の立場から見れば「医師がどのくらい自分の心身の状態を理解して、介護に橋渡ししてくれるか?」が重要になります。

 つまり行政が取り組む「ハード面」に対し、個々のサービス利用者が医師と向き合う「ソフト面」では、どのように取り組んでいけば良いのか──これが弊紙発行人の、これまで抱いてきた疑問点であり課題でした。

 その解決のヒントとなる内容を、今月2日に開催された「関節リウマチセミナー」で聞くことができました。セミナーの内容は10月2日付けの弊紙ビジネス版で報じましたが、実際にセミナーでは関節リウマチの治療を継続している患者さん2名の声が発信されました。

 今回の本紙エンドユーザ─版では、ビジネス版で紹介したセミナーの要点に加え、医師とより良い関係づくりに携わってきた関節リウマチ患者さん2名の声をご紹介いたします。介護保険サービス利用者のほとんどは、何らかの形で医療も受診していると思われます。

 今回この記事でご紹介するのはあくまで、関節リウマチ患者の方の意見ですが、本紙読者の皆さんにも「介護と医療の連携」のあり方を考える、一つの材料になるのではと思います。合計3回の連載になりますが、どうか最後までご一読頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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関節リウマチの診療「約3割で、治療の目標設定と共有ができていない」
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 セミナーは10月2日に、 米国の医薬品企業アッヴィの日本法人である、アッヴィ合同会社がWeb方式で開催しました。セミナー開催に当たり同社は、関節リウマチの治療に携わる医師と患者の双方に、アンケート調査を実施しました。

 この結果、関節リウマチの治療で「約3割のケースで医師と患者が治療のための、目標設定とその共有ができていない」と発表しました。アンケートは今年7月に、20代から70代の関節リウマチの患者100人(男性41人・女性59人)を対象に行いました。

 さらに、関節リウマチ治療を行う医師100名も対象にして、関節リウマチ治療における「患者さんと医師のコミュニケーションと、治療満足度に関する意識調査」もWebで実施しました。アンケート結果の要旨は、次の通りです。

 ■患者に対する質問=あなたは、関節リウマチの治療開始時に、医師と治療目標(=例えば医師から「一定の状態になることを目指して、治療をして行きましょう」と言われる)を設定し、共有しましたか?

 ▽回答=「はい」66%
 ▼回答=「いいえ」34%

 ■医師に対する質問=先生は治療開始時に、関節リウマチの患者さんと治療目標を設定し、共有していますか?

 ▽回答=「はい」75%
 ▼回答=「いいえ」25%

石黒直樹・愛知県医療療育総合センター総長 セミナーでこの結果を解説した、愛知県医療療育総合センターの石黒直樹総長=写真・セミナーのWEB画面より=は「約3割で、治療の目標設定と共有ができていないことを、医師は今後の課題として考えるべきだ」と指摘し「医師と患者が治療目標を設定して共有すること」の重要性を説きました。

◆───────────────────
「治療目標が設定されている」ことは患者さんの「治療の満足度」に帰結する
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 具体的に石黒総長はセミナーで、アンケート結果に対して次のようにコメントしました。

 ▼患者と医師が、治療目標を設定して共有することは非常に重要で、私は「登山」に例えている。医師が「あなたはこれから〇〇という山に登るのですよ」と。その目標を最初に決めないと、患者さんは「これからどこへ行ったらいいの?」と迷ってしまう。

 ▼「どうやって、これから高い山に登るのか?」という時に、最も短距離で登るには、どういった選択をすべきなのか──これは薬剤(という道)であるかも知れないし、あるいは道(治療方法)の変更かも知れない。

 ▼そういったことを常に考えながら「治療目標」という高い山に登っていくことが大切だ。これが、およそ3分の1で「できていない」というデータが今回示された。これは今後の課題として、医師は考えるべきだ。

 ▼この「治療目標が設定されている」ということは、患者さんの「治療の満足度」に当然帰結する。つまり患者さんの「参加」と「理解」があれば、満足度も当然高まる。そして山に登る途中で「共通の物差し」により、活動を評価することができる。

 ▼例えば「今、1合目まで来ましたけれど治療の具合はこの通りですよ」ということを常に知りながら、そして「目標が達成できるのか」を考えながら「道筋」を選ぶことができる。これは例えば「薬剤を変更する」「薬剤の量を増やす」こと等が該当する。

 ▼このようなことが必要になったら、それを客観的に「(患者と主治医が)お互いに考えて進んでいく」ことが必要になる。改めて指摘するが、患者さんと主治医が「治療目標を共有する」ことは、その「山」がある以上、絶対に必要だ。

 ▼これからどこへ進むかわからないのに(主治医が)「とにかく(医師である私に)付いて来なさい」というのは、全くの時代遅れだ。ぜひとも目標設定を、お互いの話し合いで決めて頂きたい。そして決めたことをキチンと実行する。これが重要だ。

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「主治医の先生と『ゴール』に向けて共有している『治療目標』がある」
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 セミナーには、リウマチの治療に向き合う患者を支援する等の活動を行っている、公益社団法人「日本リウマチ友の会」も参加して、その会員2名が「患者と主治医のコミュニケーション」「患者力を上げることの重要性」等について、講演しました。

 【1人目の登壇者・キタヤマさん(64歳女性)の講演内容要旨・前編】

 ▽私は現在、64歳です。(関節リウマチの)発病年齢は33歳です。出産して2年経ったころ体のアチコチが痛くなり、当時は子育ての忙しさが原因だと考えていました。ところがある朝(体の)強張り(こわばり)を通り越して、指が硬直してしまいました。

 ▽また立ち上がった時に、そこは畳であるのに足の裏がすごく痛かったり、足首が痛くて階段が降りられないで、お尻をついて一段ずつ降りていくような状態になりました。それで初めて、内科にかかりました。

 ▽内科では「(この症状が)何ヶ月か続かないと状態がわからない」と言われ、その時は診断がつきませんでした。その後、整形外科に行った時に「リウマチの疑いがある」と言われ、専門医にかかるようになり現在に至っています。

 ▽始めのうちは、痛み止めの薬はもちろんですが、免疫抑制剤とか免疫調整剤とか鎮静剤とか、3ヶ月ごとに取り換えながら使っていたのですが、ほとんど経過が良くならず、とても疲れがたまったり、痛みの上に倦怠感(けんたいかん)がひどく、大変つらかったです。

 ▽その時は子育ても大変だったのですが、主人の両親と同居をしていました。二世帯住宅でしたが、朝から義父がハタキを使ってパタパタ掃除をしていると、自分がテキパキと動けないことが大変心苦しかったです。

 ▽もちろん義父はいじわるをした訳ではないのですが、とても心苦しい時が長く続きました。またその時のお薬があまり効かなったこともあって、肘とか指とか手首とか、何ヶ所か手術もしました。

 ▽その時は、一日一日をやり過ごすのが精一杯で、ひたすら「痛くない」「体が楽になりたい」ことだけが夢でした。そして14年前から「生物学的製剤」というお薬が出来て使用するようになって、それで痛みをある程度コントロールできるようになりました。

 ▽ただ、合併症の恐れなどもありますし、加齢に伴う変化もあり、骨粗鬆症や血圧の変化などに対応していかなければならないので、色々と心配事もたくさんありました。だけど、いつか「生物学的製剤からも卒業できれば」というのが「治療のゴール」だと考えました。

 ▽そして年を重ねても痛みがない状態を維持できて、むかし趣味でやっていたマンドリンを吹いたり、卓球などのスポーツを楽しみたいというのが私の「治療のゴール」です。そして、主治医の先生と「ゴール」に向けて共有している「治療目標」があります。

 ◆以下、連載第2回目に続く。

◇─[おわりに]─────────

 今回の講演内容で弊紙が注目したのは、医師の立場から石黒総長が「治療目標の設定が、約3分の1で『できていない』という課題を、医師は考えるべきだ」と指摘したことと、キタヤマさんが約30年に渡る闘病生活を送りながらも「ゴール」を見定めていることです。

 本紙を愛読して下さっている介護サービス利用者の方々にも、自らが利用している介護事業所の担当者と「お互いに、サービスの目標設定と共有が出来ているか」を再度、確認して頂きたいと思います。

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