日本介護新聞バックナンバー

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2019年09月

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年9月30日(月)第86号*****

◆◇◆◆◆─────────────
「抗生物質」は、風邪に効く?
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 本紙発行人は、1年に1度くらい風邪をひいて近所の医師に診てもらう機会があるのですが、その医師は診察の最後に「早く治るように、抗生物質を出しておこうか?」と言ってくれので、「大変ありがたいです」と感謝して毎回「抗生物質」を処方してもらいます。

 「抗生物質」と聞いただけで、なんだかすごく「強力な薬」という印象があり、安堵感がありました。しかし、これは医学的に「×」です。「抗生物質」は、風邪やウイルスには効果がありません。

 それどころか、このような間違った知識で「抗生物質」を使い続けていると、抗菌薬が効かなくなる菌=薬剤耐性菌=が体内に残ることになり、この菌が増えると本来、感染症に効くはずの薬を飲んでも治りにくくなったり、治らなくなったります。

 薬剤耐性は「AMR」と呼ばれ、この問題を研究し、課題を解決し、それらを広く周知するため2017年4月に、国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)の中に「AMR臨床リファレンスセンター」が設立されました。

 同センターは先週火曜(9月24日)に、この1年間の調査・研究成果等を公表するため、都内でマスコミ向けのセミナーを開催しました。ここで同センターは、介護施設や介護現場でもAMRの問題がどのような状況にあるのか、調査を実施したことを明らかにしました。

 その内容は、10月に報告書として発表されるそうです。セミナー当日は、同センターが毎年実施しているアンケート調査の結果が発表されました。AMRの問題は、要介護の認定を受けているか否かに関わらず、重要な問題だと本紙では受け止めています。

 そこで今回はAMRの基本を理解するため、セミナー当日に配布された資料等を利用して、本紙読者にも関わりが深いと思われる部分を掲載したいと思います。なお、同センターが介護施設に実施した調査結果については後日、弊紙「ビジネス版」で掲載いたします。

 日本介護新聞発行人

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◆───────────────────
そもそも「抗菌薬・抗生物質」って何だ?
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 細菌やウイルスといった小さな生物が原因となる病気を感染症と言います。例えば、大腸菌は膀胱炎の原因となります。このような感染症の原因となる微生物のうち、細菌を退治する薬を「抗菌薬・抗生物質」と呼びます。

 また、外部から細菌が体内に入り、例えば肺炎(感染症)にかかると、治療のために「抗菌薬」を飲みます。すると「病気の元となる菌」を退治しますが、それと一緒に「もともと人間の体にすみついている菌(=他の菌)」も退治されてしまうことがあります。

 体の中には無数の細菌がバランスを取りながら共に生きており、その中には「抗菌薬が効かない菌」がわずかにいることがあります。「病気の元となる菌」だけでなく、「他の菌」も退治してしまうと「抗菌薬が効かない菌」=薬剤耐性菌=だけが残ることがあります。

 体内のバランスが崩れ、「他の菌」が体の中にいなくなり「薬剤耐性菌」が増えてしまう──この結果、感染症に効くはずの薬を飲んでも治りにくくなったり、治らなかったりします。同センターによれば「薬剤耐性菌により現在、世界で年間70万人が死亡している」

 「残念ながら、一般の方だけでなく、医療関係者も含めてAMRの知識が不足している。AMRは日本だけでなく世界的な課題であり、このまま何の対策も取らないと2050年には約1千万人が死亡すると言われている」とし、この問題の周知の重要性を指摘しています。

◆───────────────────
半数近くが「抗菌薬は風邪に効果がある」と誤解
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 同センターでは毎年「抗菌薬・抗生物質」について、一般市民の知識や理解の現状を知るためにインターネット調査を実施しています。今年は8月に、男女・年代別のバランスを考慮して選んだ全国の688名が回答しました。

 この中で、主な調査結果をご紹介します。「□」は一般的な質問で、回答は「=」。「■」は正誤がある質問で、正解は「▼」、不正解は「▽」で記しています。

 □「抗菌薬・抗生物質」という言葉を聞いたことはありますか?
 =60・2%「聞いたことはあるが、詳しくはわからない」
 =35・5%「聞いたことがあり、詳しく知っている」
 =4・4%「聞いたことはない」

 「抗菌薬・抗生物質」という言葉そのものは、広く認識されていました。

 ■「抗菌薬・抗生物質」はウイルスをやっつける?
 ▽64・0%=「やっつける」=不正解
 ▼23・1%=「やっつけない」=正解
 =12・9%=「わからない」

AMR資料 約3分の2の人が「抗菌薬はウイルスに効果がある」と誤解していました。本紙発行人のように「抗生物質は風邪に効く」と勘違いしている方は、この考え方が「誤解」の原因となっています。

 ■「抗菌薬・抗生物質」は、風邪に効果はあるか?=グラフ・同センター「抗菌薬意識調査レポート2019」より=
 ▽45・6%=「効果がある」=不正解
 ▼35・1%=「効果がない」=正解
 =19・3%=「わからない」

 45・6%と、半数近くが「抗菌薬は風邪に効果がある」と誤解していました。

◆───────────────────
風邪で来院した患者の約半数に「抗菌薬」を処方
───────────────────◆

 ■「抗菌薬・抗生物質」を不必要に使っていると、治療の効果が薄れる?
 ▼67・3%=「薄れてしまう」=正解
 ▽11・6%=「薄れない」=不正解
 =21・1%=「わからない」

 約3分の2が「抗菌薬を不必要に使うのは、よくない」と理解していました。

 □直近で、風邪で医療機関を受診した時に、どんな薬が処方されていましたか?
 第1位=56・1%=咳止め
 第2位=54・7%=解熱剤
 第3位=52・5%=「抗菌薬・抗生物質」
 第4位=41・7%=鼻水を抑える薬

 病状を抑える薬に加え、約半数に「抗菌薬」が処方されていました。

◆───────────────────
「抗菌薬」は「症状を抑える薬」ではない
───────────────────◆

 ここで紹介できなかった内容も含め、今回の調査結果を踏まえて同センターでは、次の6点を指摘しています。

 1、日本では(世界の調査結果と比べて)「抗菌薬・抗生物質」に関して正しい知識を持っている人の割合が低いことが明らかとなった。同様の調査が行われているヨー ロッパ諸国と比較しても、正しい知識を持っている人の割合がかなり低い。

 2、一方で「不必要に使っていると効果が薄れてしまう」「処方されたらすべて飲み切る必要がある」など、「抗菌薬・抗生物質の飲み方」に関する正しい知識は、半数以上の人が持っていることが分かった。

 3、風邪で受診したときに「症状を抑える薬」を希望する人が多い一方で、「抗菌薬・抗生物質」も上位に入っており、「抗菌薬・抗生物質」を「症状を抑える薬」と誤解している人がいる可能性がある。

 4、実際に処方された薬にも「抗菌薬・抗生物質」が上位に入っており、 誤った処方が少なくないことや、それが「誤解」を強化している可能性が示唆される。「抗菌薬・抗生物質は風邪には効果がない」ということを、国民の一人ひとりが理解することが必要である。

 5、調査から「風邪をひいても、仕事を休みたくても休めない」実情がうかがわれた。風邪を早く治し、感染拡大を防ぐためには休むことが必要であるが、そのような健康や病気に関する意識が日本の社会には十分浸透していないことも背景にあると考えられる。

 6、調査から「薬剤耐性」「薬剤耐性菌」という言葉を「聞いたことはある」人は約半分であり、聞いたことがあっても正確に理解していない人が一定数いることがうかがわれた。今後も継続して、(同センターでは)一般市民に向けた啓発活動を続けていく必要がある。

◇─[おわりに]─────────

 厚労省の中に、医師免許を持っている「技官」と呼ばれる官僚がいます。数年前、官僚組織の中でも「局長」まで上り詰め、退官してから母校の大学医学部に教授として「再就職」された方がいます。この方があるセミナーで講演した時に、これを聞く機会がありました。

 その最初の台詞が「30年以上前、私が医学生だった時に学んだ『常識』は、今ではそのほとんどが『非常識』になっている」。学問の進歩が著しく、次々と新たな研究成果が発表されている医学の世界では、それこそ「常識」なのかも知れません。

 逆の見方をすれば、大変失礼な言い方になりますが「新たな知識を学ばない医師は、『非常識』のなかで患者を診察する」のかも知れません。同センターの指摘の4番目の「誤った処方が少なくない」理由もそこにあるのでは、と考えられます。

 いずれにせよ、まずは「自分の身は、自分で守る」ことが重要です。本紙発行人も次回、風邪をひいて近所の医師に診てもらった際に「早く治るように、抗生物質を出しておこうか?」と言われたら、やんわりと「お断り」をしたいと思っています。

 今後ともどうか、本紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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 ◆本紙85号発行以降の「ビジネス版」記事(アドレスは短縮形を使用しています)
 □第107号=9月23日(月・祝)=三重県、介護助手の導入事業所が離職率「半減」
https://bit.ly/2mDGSxm
 □第108号=9月24日(火)=千葉県内の社福施設、20日時点で13ヶ所停電
https://bit.ly/2nDhK9V
 □第109号=9月25日(水)=「介護事業の売却希望トップはデイサービス」
https://bit.ly/2nAYj1C
 □第110号=9月26日(木)=特定介護、初の国内試験を10月末に実施
https://bit.ly/2mOgPU6
 □第111号=9月27日(金)=介養校、入学者の約3人に1人は留学生
https://bit.ly/2mDuJsh

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(C)2019 日本介護新聞

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*****令和元年9月22日(日)第85号*****

◆◇◆◆◆─────────────
後期高齢者の「粗食志向」がフレイルを招く?
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 このところ、記者会見やセミナーで取材に行くと、何らかの形で「低栄養」というキーワードが入っている事例が多いような気がします。本紙でも第83号(9月14日付け)で「高齢者は一般成人の約1・5倍のたんぱく質摂取を」を取り上げました。

 また弊紙「ビジネス版」第99号(9月11日付け)では「75歳以上の高齢者には、栄養サポートが重要」も配信いたしました。二つの記事とも、大学の先生が講演したものですが、「75歳以上の高齢者には……」の方は、ネスレ日本株式会社が主催したセミナーでした。

 そのネスレ日本が、セミナーが開催された当日に、「75歳以上の後期高齢者の食と健康に関する実態調査」を発表しました。こちらは題名通りに後期高齢者と、その介護や支援をする人、さらに管理栄養士に対してアンケート調査をした結果をまとめたものです。

 「高齢者の低栄養」を、栄養のプロである管理栄養士はどのように分析しているのか、また「低栄養」や「フレイル」に陥る要因は何なのか──今回はこのアンケート結果から、様々な視点で「低栄養」に関する問題点を探ってみたいと思います。

 日本介護新聞発行人

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◆───────────────────
高齢者「今の食事で十分」、栄養士「そうは思わない」
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 アンケートは「75 歳以上の食と健康に関する実態調査」として、今年6月にインターネットにより実施しました。その対象と調査数は、▼75 歳以上の男女500名、▽75歳以上の同居家族を介護・支援する男女500名、■管理栄養士200名──の計1200名です。

 まず「あなた(あるいはサポートしている高齢者)の現在の食事量、食事内容で、必要な栄養素が十分足りていると思いますか?」と質問したところ、三者の回答は次のようになりました。便宜上「思う」には「まあまあ思う」の回答を含めています。

 ▼高齢者=「思う」90%・「思わない」10%
 ▽支援者=「思う」73%・「思わない」27%
 ■栄養士=「思う」29%・「思わない」71%

 高齢者は「思う」と「まあまあ思う」が合わせて 90%、介護・支援者は「思う」と「まあまあ思う」が合わせて 73%という結果でしたが、いずれにせよ「今のままで十分に栄養が足りている」と思っている人がほとんどであることがわかりました。

 しかし管理栄養士は「思わない」が71%、「思う」と「まあまあ思う」が合わせて29%で、「現状では栄養が足りていない」と考えています。高齢者当人やその周辺と、栄養のプロである管理栄養士との間には、栄養摂取の実態に認識に差がみられました。

◆───────────────────
栄養士「高齢者の粗食志向は、逆に不健康」
───────────────────◆

 次に、食と健康に対する考えを聞くため「あなたは(もしくはあなたがサポートしている高齢者にとっては)、健康のためには、食事量やカロリーを摂りすぎない『粗食』が大切であると思いますか?」と質問したところ、次のようになりました。

 ▼高齢者=「はい」76%・「いいえ」24%
 ▽支援者=「はい」51%・「いいえ」49%
 ■栄養士=「はい」20%・「いいえ」80%

 「はい」と回答した 高齢者は 76%で、介護・支援者は 51%でしたが、管理栄養士はたった20%という結果になりました。高齢者やその周辺では「粗食が健康の秘訣」だと考えられている一方、管理栄養士からみると「逆に不健康」であることが読み取れました。

◆───────────────────
後期高齢者の2人に1人は「フレイルの疑いあり」
───────────────────◆

 そこで、回答した高齢者にフレイル(=加齢による心身の衰弱)の疑いがあるかどうかを確認するため、生活や健康状態をチェックする「基本チェックリスト(厚生労働省作成)」に回答してもらったところ、次のようになりました。

 ▼「フレイルの疑いあり」=59%
 ▼「フレイルの疑いなし」=41%

 これにより「75歳以上の約2人に1人がフレイルの疑いがある」ことがわかりました。さらに、先ほどの「あなたは健康のためには、食事量やカロリーを摂りすぎない『粗食』が大切であると思いますか?」の質問で「疑いあり」の人の回答を調べました。

 ▼「『粗食』は大切だ」=80%
 ▼「そうは思わない」=20%

 同様に「疑いあり」の人たちに、食事量について質問しました。

 ▼「量を減らしている」=8%
 ▼「量を少し減らしている=62%
 ▼「減らしてはいない」=28%

 最後に、「あなたが食生活について悩んでいることを選んで回答してください」という質問で複数回答を求めたところ「疑いあり」と「疑いなし」で違いがみられました=グラフ・セミナー資料より。「疑いあり」の回答で、数の多かった順にトップ5を挙げると…。

ネスレ日本グラフ 1=「運動量が減って空腹を感じにくくなった」
 2=「メニューを考えるのが面倒」
 3=「市販の弁当や総菜を、味や量の問題で好まない」
 4=「特定の食材ばかりを食べてしまう」
 5=「食事をするときにむせることがある」

 全回答で「疑いあり」と「疑いなし」の人の悩みの合計数値を比較すると、「疑いあり」の人は136%、「疑いなし」の人は88%と、「疑いありの人のほうが食事の悩みは多い」という結果となりました。これらを踏まえ、ネスレ日本では次のように分析しています。

 「(疑いありの人は)『メニューを考えるのが面倒』『特定の食材ばかりを食べてしまう』等、食事の準備が億劫になる傾向がある他『食事をするときにむせることがある』『食事量が減って空腹を感じにくくなった』等、身体的な不具合が出現しているのが特徴的だ」

◇─[おわりに]─────────

 先日、本紙をご愛読頂いている読者から「高齢者はそもそも食事量が減少しているのだから、栄養を十分に取ってもらおうとすると難しい問題がある」とのご指摘を頂きました。確かに、その通りです。

 では、どうしたら食が細くなった高齢者に、十分な栄養を取ってもらう食事が提供できるのか? 1日3食で、具体的にどのような食事を取れば、後期高齢者にとって十分な栄養が確保できるのか──今後本紙では、この2点を特に留意して報じていきたいと思います。

 今後ともどうか、本紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆本紙84号発行以降の「ビジネス版」記事(アドレスは短縮形を使用しています)
 □第102号=9月16日(月・祝)=厚労省、台風15号の災害対応で「相談窓口」を自治体に連絡
https://bit.ly/2m6Rxja
 □第103号=9月17日(火)=千葉県内の福祉施設の停電、13日時点で121ヶ所
https://bit.ly/2mu9CYR
 □第104号=9月18日(水)=厚労省、特定介護の国内試験「年度内には…」
https://bit.ly/2kyVOvC
 □第105号=9月19日(木)=在留資格「介護」、千葉県で29事業者が「マッチング」
https://bit.ly/2kXtdAe
 □第106号=9月20日(金)=介護関連の主要議題は「疾病介護予防へのインセンティブ」
https://bit.ly/2mlXuZI

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*****令和元年9月15日(日)第84号*****

◆◇◆◆◆─────────────
「日本の『寝たきり』は、どこで作られているのか?」
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 先日、たまたまNHKのニュース番組を見ていたら、病院で患者を「身体拘束」することは、患者本人の意思ではなく、病院の人手不足等の理由で患者を常時見守ることができないことが大きな要因で、家族も苦渋の決断をして「了承している」事例を報じていました。

 それなりの事情があるにせよ、患者の意思を尊重したものではなく一部では結果的に、入院期間が長くなって効果的なリハビリもできず、心身共に弱っていくという悪循環に陥ることもあるそうです。

 弊紙でもたびたび取り上げている、日本慢性期医療協会(略称=日慢協、武久洋三会長)の定例記者会見(9月12日開催)で、これとは別な角度で、「病院側の都合による患者へ措置」に大きな問題がある、と武久会長は指摘しました。

 武久会長は「実は要介護者の多くは要介護状態になる前に何らかの医療を受けており、医療を受けている間に要介護状態になる患者が多いという現実がある」と指摘しています。この「医療を受けている間」として示した事例が、膀胱に装着したバルーンカテーテルです。

 この「装着」により、患者がベッドから動けなくなり、この結果リハビリもできずに「寝たきり」になり、自宅に帰れず介護施設のお世話になり、ただでさえ足りない介護職員がさらに必要となる──という、医療・介護業界の「悪循環」を問題視しています。

 今回弊紙では、この武久会長の指摘を「患者」目線で、「なぜ病院側の都合でこのような医療器具が『装着』されるのか?」という視点から、当日の記者会見で発表した内容をご紹介したいと思います。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
昔の急性期病院は「危ない人は管を入れておく」
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 日慢協の主要な会員である慢性期病院【注2】では10年以上前に、急性期病院【注1】からの紹介で慢性期病院に入院してきた患者の半分程度が、膀胱にバルーンカテーテル【注3】を留置されたまま、入院してきた事例が多かったそうです。

 ■【注1】急性期病院=急性疾患または重症患者の治療を24時間体制で行なう病院のこと。病気が発症して急激に不健康となった患者を受け入れる。病気の発症後、14日間以内が急性期の目安とされている。

 □【注2】慢性期病院=急性期治療を完了した、または在宅療養中に状態が悪化した患者に対し、継続的な治療とリハビリテーションを行う病院で、在宅復帰を目指す。特に超高齢社会となった日本では、慢性期医療の重要性は高まり続けている。

 ■【注3】バルーンカテーテル=先端が風船状になったカテーテル。カテーテルとは、医療用に用いられる柔らかい管のこと。尿カテーテルではバルーンに尿を溜める。これを装着したままの状態を「留置する」といい、患者は通常、ベッドから動けなくなる。

 膀胱にバルーンカテーテルを留置したまま紹介した理由を聞いてみると、急性期病院では「高齢患者で歩行が不安定である」と、入院直後にバルーンカテーテルを装着することが多かったそうです。

 さらにその理由を看護職員に聞いてみると「高齢患者が病院内で転倒しないように予防策としてであること」「安静臥床のためであること」「排尿のたびにオムツ交換する余裕がないということ」。

 具体的には、患者が夜中に一人でトイレに行こうとして、ベッドを降りて歩いているうちに転倒した、となると、病院の看護師の責任となるので「危ない人は管を入れておく」が、急性期病院では一般的だったそうです。

◆───────────────────
病院が多くの患者に「臥床」を強いているとしたら……
───────────────────◆

 さらに昔の急性期病院では、介護の手間のかかる患者には「家族等の付添を強要していた」こともあったそうです。この慣習はその後に見直され、禁止されて「基準看護」【注4】がつくられました。

 ■【注4】基準看護=たとえば、病院の一般病棟では「患者:医師=16:1」、「患者:看護師(または准看護師)=3:1」という人員配置基準が定められており、この入院患者数と看護要員数の比率によって、診療報酬点数に加算される点数が異なる。

 急性期病院でも高齢者の入院が増加しており=グラフ・記者会見資料より=、看護業務の中で介護業務の割合が増えています。さらに入院中に脱水や低栄養に陥る高齢患者も多いそうです。「治療のために入院したのに、要介護状態になってしまうのは大変なことである」

武久会長作成資料 「2018年度の医療・介護同時改定では、医療と介護の現場で、低栄養や脱水の治療、早期リハビリテーション等に加算がつけられた。もしも今でも、急性期等の病院でバルーンカテーテルの留置があるとしたら……」

 「また、安静のためにベッド上での臥床(がしょう=病気でベッド等に寝た状態)を強いている患者が多い病院があるとしたら、大変なことである」と、武久会長は警鐘を鳴らし、「尿道への留置カテーテルの長期使用による弊害」として、次の点を挙げています。

 ■カテーテル留置の合併症
 ▽尿路感染=尿道カテーテル留置中は膀胱炎、尿道炎などの尿路感染は不可避であるが、急性前立腺炎、精巣上体炎など発熱や疼痛を伴う感染については積極的に治療する必要がある。
 ▽膀胱結石=異物であるカテーテル周囲に結石ができ、膀胱結石が形成されることがある。
 ▽尿道皮膚瘻=カテーテル周囲の尿道炎のため、尿道と皮膚(多くは陰茎腹側と陰嚢の境界あたり)に瘻孔ができることがある。この予防のため、カテーテルは頭の方へ向けて下腹部に固定する。

◆───────────────────
「『排泄自立』を大切にすれば患者は自宅に帰れる」
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 また、バルーンカテーテルを留置しているためにベッドから動けず、結果的に「寝たきり」になり、リハビリもできずに入院が長期に渡り、自宅にも帰れない……という悪循環に陥る可能性が高くなることを指摘した上で、次のように会見で述べました。

 「まさか今でも急性期病院などで、介護力不足の対応のためにバルーンカテーテルの留置や、過度のベッド上安静を強いられていることはないと思われるが、当協会の会員から『最近、バルーンカテーテルを装着したまま紹介されてくる患者が増えている』との声がある」

 「近々当協会では、急性期病院から紹介患者を受け入れている『後方病院における新規入院患者の入院時の状況』を調査したいと思っている。治療のために安静が必要だからという理由で臥床を強要することは、患者にとって何のプラスにもならない」

 「またオムツ交換が面倒だから、安易にバルーンカテーテルを留置しようとするスタンスがある病院があるとしたら『変えませんか』と提言したい。安易にバルーンカテーテルを留置してしまう病院側の理由は何であろうか?」

 「病院の都合で、バルーンカテーテルを留置することをやめませんか、と言いたい。まず、バルーンカテーテルよりオムツだ。次に、オムツより排泄援助。さらに『排泄自立』を大切にする。そうすれば、患者は自宅に帰れる」等と、武久会長は提言しました。

◇─[おわりに]─────────

 お恥ずかしながら、弊紙発行人は今回の記者会見で初めて「バルーンカテーテル」という存在を知りました。これを留置することで「合併症」が発症したとしたら、それも「患者本人の必要性」よりも、「病院の都合」が優先されているとしたら……。

 入院患者は医師の指示に「適切」に従うことで「早期の退院」を望みます。しかしその指示が「適切」か否かは、患者では判断できません。今回の武久会長の「提言」のような、医療現場からの「声」も、弊紙ではできるだけ読者の皆さんに届けていきたいと思います。

 今後ともどうか、本紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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*****令和元年9月14日(土)第83号*****

◆◇◆◆◆─────────────
「高齢者は一般成人の約1・5倍のたんぱく質摂取を」
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 8月末頃より「ビジネス版」の取材が立て込んでしまい、前回から約3週間ぶりの発行になります。間が空いてしまい、申し訳ございませんでした。その中で、本紙「エンドユーザ─版」にもぜひ掲載したいネタが何本かできました。

 特に、9月2日(月)付け第92号=低栄養対策の前提は「たんぱく質の摂取」=は、取材していて大変勉強になりました。これまで本紙では「低栄養」をテーマに、主に「共食」という切り口で何度か記事にしてきました。

 この時に講演した、神奈川工科大学の佐々木講師は「低栄養」対策として、「十分な栄養を摂取することは当然だがその前提として、たんぱく質をキチンと摂ること。特に高齢者は、一般的な成人の約1・5倍必要だ」と指摘しました。

 これまで本紙では、十分な栄養を取ると言っても、栄養学的な専門用語を並べても一般の読者にはわかりにくいと考え、敢えてこの視点からは取り上げませんでしたが、佐々木講師の話しは具体的で非常にわかりやすい内容でした。

 今回は、この時の講演内容に基づいて、できるだけ専門的な内容はさけて、理解しやすい事例に絞って「低栄養対策におけるたんぱく質摂取の重要性」について、述べてみたいと思います。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
長寿地域の食習慣は「たんぱく質+野菜」
───────────────────◆

 1966年(昭和41年)に、日本老年医学会が発行している雑誌に、著名な医師である近藤正二氏が「食と健康長寿」という研究結果を発表しました。これは当時の日本国内で、長寿村と短命村の食生活の習慣とその内容を分析したそうで、次の点を指摘しました。

 ▽米の偏食・大食の食習慣があるところは、必ず長寿者が少ない。
 ▽魚を大食して、野菜不足のところは必ず短命である。
 ▼長寿村では、必ず魚か大豆を常食し、その上で必ず野菜も十分に食べている。
 ▼海藻類を常食しているところは脳卒中が少なく、それだけ長寿者が多い。

 これらの調査結果を踏まえ、近藤医師は「長寿のための提案」として、次のような点を挙げ「たんぱく質+野菜」の摂取の重要性を説いています。

 ▼米の偏食・大食をやめる。
 ▼肉・魚・卵もしくは大豆を毎日、十分に食べる。
 ▼野菜は多く食べる。
 ▽油を少しずつ、毎日食べる。
 ▼海藻を常食とする。
 ▽なるべく牛乳を飲む。

◆───────────────────
高齢者に必要なたんぱく質摂取量は75~90g/日
───────────────────◆

 これを踏まえて佐々木講師は高齢者に必要なたんぱく質の摂取量について、厚労省が公表しているデータ等を元に「高齢者に必要なたんぱく質の摂取量の閾値(いきち=生物体に対し、ある反応を引き起こすのに必要な最小あるいは最大の値)は、成人の閾値よりも高い」

 「具体的には、一日当たりのたんぱく質の摂取量が、成人では60gなのに対し、高齢者は75~90gとなる。これに達しないと高齢者は成人と同様の、骨格筋のたんぱく質合成が誘導されない(=起きない)」

 「また、たんぱく質合成が誘導されるためには、例えば高齢者が夕食だけ90g摂取しても意味がなく、朝・昼・夕と3食バランスよく取ることが必要だ。つまり高齢者は一回の食事で25~30gの摂取を続けることが重要となる」等と指摘しました=グラフ・講演資料より

たんぱく質資料 ▽成人に必要なたんぱく質摂取量=60g/日(20g/食)
 ▼高齢者に必要なたんぱく質摂取量=75g~90g/日(25~30g/食)

 ところが現実には、ほとんどの高齢者がこの基準に達していないことが、厚労省の栄養調査でわかっているそうです。具体的には、次の通りです。

 □70歳以上の男性=71・9g/日
 ■70歳以上の女性=61・5g/日

◆───────────────────
「一度に摂取するのではなく3食バランス良く」
───────────────────◆

 その上で、過去の老年医学の研究から成果として発表された「長寿のための提案」も踏まえ、たんぱく質摂取のポイントとして、佐々木講師は次の4点を挙げています。

 1、たんぱく質と野菜を同時に取る。
 2、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のバランスを取る。
 3、一日の中で、たんぱく質摂取量のバラツキに注意する。
 4、年を重ねるごとに、多めのたんぱく質の摂取が必要。

◇─[おわりに]─────────

 実はこの佐々木講師の講演の後で、「ビジネス版」の取材でたびたび「低栄養」をテーマにした記者発表や、医学上の問題点の指摘を記事にしました。これらについても、できるだけ早期に本紙で取り上げていきたいと思います。

 「低栄養」対策では、佐々木講師はその前提として「たんぱく質摂取の重要性」を指摘しましたが以前に、この栄養面での摂取基準を決める厚労省の担当官と話す機会がありました。その担当官は「今後は『共食』を施策の中に盛り込んでいく」と話していました。

 本紙では今後も「低栄養」対策については、「日々の食事の摂取ポイント」と「共食の具体的な実践方法」の二つのテーマを重点的に取り上げ、そこから派生する様々な問題点もご紹介していきたいと思います。

 今後ともどうか、本紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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 ◆本紙82号発行以降の「ビジネス版」記事(アドレスは短縮形を使用しています)
 □第87号=8月26日(月)=「もう、拘牢省(こうろうしょう)とは言わせない」
https://bit.ly/2lDPp2g
 □第88号=8月27日(火)=介護実習生の「認定」、6月末で3150人
https://bit.ly/2lCOVtm
 □第89号=8月28日(水)=SOMPO「2022年に看護師と同水準の処遇に」
https://bit.ly/2lI34pe
 □第90号=8月29日(木)=次期介護保険制度、「年末のとりまとめ」に向け本格的な議論を開始
https://bit.ly/2kpWof9
 □第91号=8月31日(土)=厚労省予算要求「介護の生産性向上」等を重視
https://bit.ly/2lIFSXA
 □第92号=9月2日(月)=低栄養対策の前提は「たんぱく質の摂取」
https://bit.ly/2lFVjjp
 □第93号=9月3日(火)=自然な姿勢で歩行ができる「補助杖」
https://bit.ly/2k61LQi
 □第94号=9月4日(水)=介護予防推進のため「通いの場」を魅力的に……
https://bit.ly/2lF6hpv
 □第95号=9月5日(木)=「認知症作業療法」啓発リーフレット配布
https://bit.ly/2m3mAfP
 □第96号=9月7日(土)=特定介護、海外試験の合格率が「依然低調」
https://bit.ly/2kySDny
 □第97号=9月9日(月)=ベトナム、送出機関2者「リスト」から削除
https://bit.ly/2kM4RsW
 □第98号=9月10日(火)=迷った人を家族へ帰す「おかえりQR」販売エリア拡大
https://bit.ly/2mhuXEN
 □第99号=9月11日(水)=「75歳以上の高齢者には、栄養サポートが重要」
https://bit.ly/2kfcfwM
 □第100号=9月12日(木)=特定介護、ミャンマーでの試験「中止」
https://bit.ly/2lW1C2j
 □第101号=9月13日(金)=「停電の要因や復旧プロセスを厳格に検証する」
https://bit.ly/2mbGN33

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