日本介護新聞バックナンバー

弊紙は「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」を目指し、日本最大級のメルマガサイト「まぐまぐ!」を利用して配信しています。平成28年12月1日に創刊し、月に約3回発行しております。ここではバックナンバーを掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。無料で購読できますので、ぜひ一度「まぐまぐ!」からお申込みを頂ければ幸いです。私たちは「初心者の視点」を忘れず、読者との「対話」を心がけ、読者の皆さんが最適な介護を選ぶのに役立つ「提案」をいたします。https://www.mag2.com/m/0001677525.html

2019年06月

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年6月29日(土)第74号*****

◆◇◆◆◆─────────────
「最適な医療」を、自分で選ぶには……
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 今さらながらですが、国がその構築を目指している「地域包括ケアシステム」とは、厚労省の説明によれば次のように定義されています。

 「2025年(令和7年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進する」

 この中核となるのは、医療と介護の二つのサービスになります。弊紙はこの中で介護に着目し「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」を目指してニュースを配信していますが、取材を重ねれば重ねるほど、医療と介護の深い関連性を感じます。

 特に、高齢者が「最適な医療」を自分で選べているのか、というと、多くの疑問が湧いてきます。今週の弊紙「ビジネス版」第48号=6月27日付け=では、「転院してきた高齢『終末期』患者の約半分は改善する」を取り上げました。

 患者の立場からだけではなく、医療従事者の立場からも「高齢者にとっての最適な医療」に対して、様々な提言がなされています。今回はこの第48号で取り上げた話題を深堀し、さらにもう一つ、「総合診療」に取り組む現場の医師の声を紹介したいと思います。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
「終末期」に最適な医療とは……?
───────────────────◆

 「終末期」と聞くと、がんの末期症状を想像します。そもそも「終末期」とは、がんや神経難病以外では、日本医師会で「最善の治療を施しても病状の改善がみられない場合」等と定めているそうです。

 具体的には低栄養、脱水持続状態、重症感染症、感染症重積、真性心不全、腎不全、植物状態──等が該当します。弊紙はこれまで、日本慢性期医療協会が毎月開催している定例記者会見に出席していますが、同協会の武久洋三会長はたびたび、この点に触れています。

 それは、「他の医療機関(急性期病院等)が『終末期』と判断した高齢者で、慢性期病院へ紹介されてきた患者のうち、約半数程度は治療により改善する」ということです。特に武久会長が指摘しているのが、「低栄養」と「脱水持続状態」です。

 これらの症状が「終末期」と判断されることにも驚きましたが、「最善の治療をしたが病状の改善が見られない」として、これらの患者が慢性期病院へ「紹介されてくる=送られてくる」と聞くと、怖さすら感じます。

 これは「もう、この高齢者の病状は『終末期』だから、急性期病院である当院では面倒が見切れないので、慢性期病院で看取って欲しい」という意味になります。しかしこれに対し武久会長は、次のように指摘しています。

 「特に専門医は、高齢者の低栄養や脱水による虚弱状態は『終末期』として対応することが多い。しかし治療可能で、意識のある患者に『頑張れば回復できる』と説明し、水分や栄養補給を適切に行えば病状が改善するケースが多い」

 本紙は、記者会見の席で武久会長に「そのような状況で『終末期』として慢性期病院に受け入れた高齢者のうち、どのくらいの患者が回復し退院していくのか」と質問したところ、「100例あったとしたら、半分の50例くらいが該当するだろう」との回答でした。

 その理由として「そもそも高齢者には、一日に必要な水分と栄養が決まっているが、急性期の医師はこの当たりの治療が不得意だ。また急性期は看護師の配置が手厚いが、ケアスタッフ(介護職員)はほとんど機能していない」

 「これに対し慢性期病院は、医療とケア(介護)の両面で適切な対応ができる。特に高齢者に対してはケアが重要になってくる。今後は急性期病院であっても、看護師は看護業務に集中できるように、ケアを意識的に入れてくべきだと思う」等と指摘していいます。

 さらに武久会長は「低栄養や脱水で全身状態不良の高齢者の治療は、高度急性期病院の臓器別専門医より、地域多機能病院の総合診療専門医による治療がふさわしい」とも述べています。それではその当事者である「総合診療専門医」は、どう捉えているのでしょうか。

◆───────────────────
「内科」という領域の中でも多くの「すき間」がある
───────────────────◆

 弊紙は、6月21日に都内で開催された「仮病の見抜きかた」(金原出版)という本の出版記念の記者会見に出席しました。著者は國松淳和医師(医療法人社団永生会南多摩病院)=写真=という、総合内科とリウマチを専門としているドクターです。

国松先生1 國松医師は「何科の医者か、と尋ねられれば『内科』と答えている。総合内科的な能力を活かして、全身を系統的におかす病気と治療が専門だ、と答えたいところだが、患者さんのニーズに応える形で長年、不明熱・不定愁訴・診断不明・原因不明な病気と向き合ってきた」

 「病名が不明だなんて、各科の専門医が知識・技術を総動員すれば、そんなことにはならないのでは、と疑問に思われるかも知れないが、実際に存在する。理由は様々あるがその一例が、専門医が多すぎることだ」

 「ひと口に内科と言っても、消化器内科・腎臓内科・循環器内科・呼吸器内科など、いくつもの専門がある。各科を細胞に例えると、各科に収まらない『細かなすき間』に該当するような疾患がいくつもある」と述べています。

 この「すき間」に当てはまるような患者は、次の5つの事例に分類されるそうです。

 1=症状もないし、病気もない。
 2=症状はあるが、病気かどうかわからない。
 3=病気がありそうだが、病名がわからない。
 4=病気だが、何科が診たら良いかわからない。
 5=病気であり、どの科がみるかは自然とすぐに決まる。

 國松医師は、「1は『健康な人』なので問題はない。4は総合内科があれば良いが、逆にみれば『たらい回し』のリスクがある。2~3は『困った患者さん』となってしまうリスクがある。特に2は、周囲から『仮病』と言われるリスクがある」と指摘しています。

 その上で「私はこれまで2・3・4の患者さんの診断と治療に専念してきた。これらは、専門医や大学病院などから『わからない』『もう診られない』と言われた患者さんだ。まさに私のところに『流れ着いた』方々で、その多くが『仮病』と言われ続けた経験を持つ」。

表紙 今回、國松医師が著した「仮病の見抜きかた」=写真・本の表紙=には、その10例が小説風に紹介されています。また「これは詐病を暴く本ではない。症状以外に、患者さんには何が隠されているのか、それに医師はどう向き合うべきかの視点から、医学的なポイントを解説した」


 「患者さんが、この先生はわかっていないなと感じたら、その医師もあなたのことをわかっていない可能性がある。それくらい、頻繁に医師と患者はすれ違っている。患者の発する全てをよく観察し、感じ取ることが重要だ、というメッセージを込めた」とも述べています。

◆───────────────────
 「すき間」を埋めていくような工夫を…
───────────────────◆

 この記者会見で本紙は國松医師に、「総合医の先生は今後さらに必要とされるだろうけれど、その数は実際には増えていないと思われる。その対策として、まず専門医が診て、総合医に橋渡しした方が良いのか、それとも総合医自体をもっと増やすべきか」と質問しました。

 國松医師は、次のように回答しました。

 「私の個人的な意見を言えば、総合医を増やすことは無理だ。本来は、呼吸器内科医の先生が呼吸器内科を全てみれば解決する。ただ実際には、呼吸器の中でも肺がんだけとか、肺気腫だけとか、専門の中である領域しか診ない」

 「そういう現状だから、『すき間』が埋まらない。そこで私の提案は、例えば消化器内科だったら『全て見る』という消化器内科の先生がいれば良いと思う。総合内科は大きな病院にいると活躍できるが、今後は専門医の作り方を考えた方が良いと思う」

◇─[おわりに]─────────

 武久会長の記者会見では、実際に指摘したのは「終末期の医療費について」でした。急性期病院などで「終末期」を看取ろうとした時の入院費と、慢性期病院で診た時の入院費は、倍以上違ってきます。しかも「終末期」の方が結果的に退院もできるようになります。

 また國松医師が指摘したのは、「医師が先入観なしに患者と向き合うことの重要性」だと思います。いずれも、患者が「最適な医療」に巡り合うまでに、ミスマッチが起きてしまう原因を述べています。

 國松医師の病院を訪れる患者さんの中には「ネットで調べてきました」という方も多くいるそうです。できればそうならる前に、地元の「かかりつけ医」から適切に、このような「最適な医療」に橋渡しされることが、本来はベストであるはずです。

 しかし、そうはなっていないのも現実です。弊紙では今後も、「最適な介護」と深く関連する「最適な医療」を選択するために、役に立つ様々な情報を積極的にご紹介していきます。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆今週の「ビジネス版」記事(アドレスは短縮形を使用しています)
 □第45号=6月24日(月)=認知症の人の見守りに「チームオレンジ」
https://bit.ly/2RKHvjv
 □第46号=6月25日(火)=アジア外国人材、希望職種で「介護」は11番目
https://bit.ly/2XfVsvN
 □第47号=6月26日(水)=新聞販売店が、高齢者等に「焼き立てパン」を宅配
https://bit.ly/2ZX2LWm
 □第48号=6月27日(木)=「転院してきた高齢『終末期』患者の約半分は改善する」
https://bit.ly/2XiGB3Z
 □第49号=6月28日(金)=特定技能「介護」、合格率約7割から4割程度に急落
https://bit.ly/2xu6z5j
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo-b.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆公式ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆ビジネス電子版=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo/blog
 ◆弊紙専用アドレス=n-kaigo@nifty.com
 ◆弊紙ツイッター=https://twitter.com/Nippon_Kaigo
 ◆Facebookページ=https://www.facebook.com/nipponkaigo

(C)2019 日本介護新聞

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年6月23日(日)第73号*****

◆◇◆◆◆─────────────
連載第4回=認知症施策は「次のステージ」に入るのか?
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 鈴木隼人衆議院議員の「認知症国会勉強会」は、これまで11回の開催を重ねています。途中、何回か取材できなかった回もありましたが、弊紙は第1回目より参加しています。それを踏まえて「よくここまで続いてきたなぁ」というのが、正直な実感です。

 今回の「認知症基本法案」の国会提出は、その積み重ねの一つの結論ではなかったかと思いますが、鈴木議員はこれまでを振り返って、どのように感じているのか、また今後、どのように「認知症予防」の活動に取り組んでいくのか、聞きました。

 これまでの3回の連載では「認知症基本法」そのものに対して質問してきましたが、最後の第4回目は「認知症国会勉強会」について、尋ねました。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
認知症予防は「点から面へ」移行したのか?
───────────────────◆

 □本紙=鈴木議員はこれまで「認知症国会勉強会」で、「認知症予防活動は、点から面へ展開することが重要だ」と指摘してきた。現時点で、これはどの程度実現したと考えているのか?

 ■鈴木=写真、認知症国会勉強会で撮影=まず「認知症基本法」では予防を柱に据え、全国規模の追跡調査を行うことを規定した。また政府の「大綱」にも同様の項目を盛り込んだ。
鈴木議員
 このように、予防のエビデンス構築を面展開していく環境づくりは「認知症基本法」と「大綱」で整えられたと思っている。また、私は一昨年、「全国認知症予防ネットワーク」を立ちあげた。

 「全国認知症予防ネットワーク」では、全国のメンバー向けにセミナーや勉強会、交流会などを行っている。実は「認知症国会勉強会」はその勉強会も兼ねて開催している。

 これらの活動を通じ、ネットワークに加盟する方々の個々の活動のモチベーションが向上したり、活動の質の向上が図られたり、その結果として認知症予防の普及が進んだり、といった面的効果もあがっていると考える。

 ただ、本当のスタートはこれからだ。エビデンスをしっかりと構築して、そのエビデンスを元に全国に認知症予防を普及していきたい。

◆───────────────────
認知症に対する世間の「考え方」は変わったのか?
───────────────────◆

 □本紙=「認知症国会勉強会」の中で、「今後の認知症施策は、当事者を起点とした地域づくりを(弊紙5月26日付け第67号参照)」との指摘があった。これに対し、鈴木議員の現状認識は?

 ■鈴木=ここ数年、認知症当事者の皆さんが非常に積極的に声を挙げている。このことによって、本人の置かれた状況や日々感じていることを周りの人が知る機会が増えてきた。これは大きなインパクトを持っていると思う。

 社会を変える「種」は認知症当事者の皆さんご自身に蒔いて頂いた。「認知症基本法」はこれからその種を芽吹かせるにあたっての、「水」のような存在になると思う。

◆───────────────────
中重度の人にとっての「フレンドリーな社会」とは?
───────────────────◆

 □本紙=弊紙の読者から「認知症フレンドリーと言っても、中重度の認知症の方の意向を尊重することは時として非常に難しいのではないか?」との質問を頂いた。具体的には「買い物の時に『払った、払っていない』の問題を起こして以降、引きこもりがちになってしまった人がいる」とのことだったが、この点に対する鈴木議員の認識は?

 ■鈴木=少し脇道にそれるが、社会を変えていく上で、テクノロジーが果たす役割は非常に大きい。テクノロジーの社会実装によって世の中はどんどん変わっていく。

 例えば、最近スーパーや病院など様々な場所でセルフレジが目立つようになった。セルフレジであれば、「払った、払っていない」という問題は生じない。

 このように、何か社会課題が露呈する時には必ず、それに対応するようなテクノロジーが出てくるものだ。

 質問については、意向の尊重は大変重要なことだが、重症度合いによってはそもそも意向を示すことができないなどの難しい場面も出てくるかもしれない。

 私は「認知症基本法」のカギは「尊厳」だと考えている。その人が「何をしたいのか」「どう生きたいのか」を尊重して接することで、周辺症状が軽減し、当事者のQOLも上がっていくことになる。

◆───────────────────
「基本法」の制定で「新たなステージ」に入るのか?
───────────────────◆

 □本紙=今回「基本法」が成立することで、鈴木議員ご自身の活動も「新たなステージ」に入るのか?

 ■鈴木=国民医療費が高騰し、一方で経済成長は非常に緩やかというマクロ経済情勢の中で、無尽蔵に社会保障関連予算を増やすことは不可能だ。

 従って「限られたパイ」をどのように分配するかが、政治に求められる重要な役割になってくる。社会保障分野は課題山積だが、認知症対策はその中でもトップレベルのプライオリティと言っていい。

 ちなみに、認知症にかかっている社会全体のコストは約14.5兆円と言われる。うち医療費が1.9兆円、介護費は6.4兆円だ。残りの6.2兆円は何かと言うと、インフォーマルケアコスト、つまり家族などによる無償の介護を金額に換算したものだ。

 ただでさえ人口が少なくなって、働き手が足りなくなる中で、介護に人手を要する認知症がこれからもっともっと増えていき、介護離職もそれに伴って増えていく事態が生じれば、もう社会全体として「目も当てられない」という状況になる。

 ワーストシナリオは国の税収が減り、社会保障費を国が賄えなくなることだ。そうならないためにも、限られたパイの中で、認知症対策への予算配分を厚くしていかねばならない。

 その役割を担うのは政治だ。今回の取材の冒頭に、「国会での認知症対策の議論が低調」と指摘したが、「認知症基本法」の検討に当たり、一時的に議論が活性化した。

 しかし、私が主催する「認知症国会勉強会」への国会議員の参加者数をみる限り、まだまだ永田町における関心は低いと言わざるを得ない。「認知症基本法」が成立したら終わりではなく、この法律によって私たちはようやくスタートラインに立つことができるのだ。

 これから私たちは本気で、認知症施策をいかに充実させていくかの議論をやっていかなくてはならない。そういう意味で「次のフェーズ」に入ったとは思うが、「次のステージ」にはまだ立てていないと思う。

 スタートラインには立った。けれど国会における認知症の議論はまだまだこれからだ。そういったことを念頭に、私はこれからも「認知症国会勉強会」を地道に続けていきたい。

◇─[おわりに]─────────

 最近、発行人の近所のスーパーマーケットで「自動レジ」が導入されました。これにより、会計で細かなお金を用意しなくても、極端に言えば「財布の中の有り金を全て機械に投入すれば、自動的に機械がつり銭を計算して出してくれる」ようになりました。

 この「自動レジ」は、あくまでレジ係の人の作業量削減と省力化が目的で導入されたものと思いますが、対象が老若男女に限らず、ユーザー側にとっても非常にメリットが大きいシステムだと思います。

 これがさらに一歩進んで、「認知症フレンドリー」が主目的で導入されるようになれば、日本の社会全体が「大きな一歩を踏み出した」と言えるのではないか、と考えます。一刻も早く、そんなことが「日常的」になる社会になって欲しいと、切に願います。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo-b.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆公式ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆ビジネス電子版=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo/blog

(C)2019 日本介護新聞

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年6月22日(土)第72号*****

◆◇◆◆◆─────────────
連載第3回=「尊厳」に、どう向き合うのか?
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 当たり前のことですが、そもそもどんな人間であっても「尊厳」は尊重されるべきです。では、日頃から本当に、どんな人に対しても「尊厳を尊重しているか?」と問われれば、お恥ずかしながら発行人は自信を持って答えることができません。

 弊紙ではこの「尊厳」に関する質問をする際に、鈴木隼人衆議院議員に「認知症の方の『意向』を尊重するということか?」と質問しました。それに対する回答が、この第3回目の連載で述べられています。

 読者の皆さんなりの「尊厳」の考え方と照らし合わせて、記事をお読み頂けると幸いです。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
認知症の人の「尊厳」は、どのように尊重するのか?
───────────────────◆

 □本紙=「認知症基本法」の三本柱の3番目「尊厳」について。そもそも「尊厳」とは、具体的にどのようなことなのか?

 ■鈴木=写真、認知症国会勉強会で撮影=一部の医療機関や介護施設において、薬剤の過剰投与によって周辺症状(=妄想、興奮、徘徊などの症状群)を悪化させたり、かえって寝たきりになるなど体調を崩したりしているケースや、過度の身体拘束(ベッドに体を縛り付けるなど)が行われているケースが、現実に報告されている。

鈴木議員2 現行の法律で、過度な身体拘束は禁止されているにもかかわらず、残念ながらそのような報告も散見されるのが実情だ。「これは何でなんだろう?」と考えると、やはり私は、根っこは「尊厳をいかに尊重しているのか」だと思う。

 認知症の人の意向を汲むことは疑いなく大変重要なことだが、重症度合いによってはそもそも意向を示すことができないなど、難しい場面も出てくるかもしれない。私は「認知症基本法」の肝は「尊厳」だと考えている。その方が「何をしたいのか」「どう生きたいのか」ということを周りがキチンと汲みとる。

 そして、その想いを尊重して接することで、周辺症状が軽減し、当事者のQOLが上がっていく。結果的に医療機関や介護施設の皆さんのご負担も減り、みんながウィンウィンになる。

 そういった観点から「十分に尊厳を尊重しているか?」と振り返ると、多くの施設において、まだまだ工夫の余地が残されているのではないかと思う。そこで今回の法律では、「尊厳の尊重」を三本の大きな柱の一つに位置付けた。

 そして、「医療機関や介護施設の責務」として良質な医療、福祉の提供に努めるべき旨を規定し、さらに国や地方公共団体は医療や介護従事者の資質向上に向けた取組を行っていくことも法律に盛り込んだ。

 これから医療・介護の現場に「尊厳の尊重」という魂がより一層こめられていく。そして、認知症の人たちが生きがいを感じながら笑顔で過ごすことができ、家族も安心して暮らせるようにしていく。以上が、私が「認知症基本法」に込めた想いであり、この法律が社会を大きく変えていくであろうと思っている点だ。

◆───────────────────
「認知症基本法」と「大綱」は、どう違うのか?
───────────────────◆

 □本紙=残念ながらこれまで、一般紙等では「認知症基本法」の報道はほとんど見かけないが、「大綱」の話しはたびたび目にする。両者はどう違うのか?

 ■鈴木=「認知症基本法」は国会がリードしている議員立法で、「大綱」は政府が策定した戦略だ。厚労省とはこれまで多くの意見交換や共同作業の場を経て志を一つにしており、「認知症基本法」と「大綱」も相当噛みあったものになっている。

 そしてこれは大変珍しいことだが、私が主催する「認知症国会勉強会」にも、厚労省は毎回出席している。だから厚労省も、課題感や「羅針盤」は十分に共有してくれていると考えている。次の課題は「認知症基本法」や「大綱」に謳った精神を、しっかりと施策レベルに落とし込んでいくことだ。

 なお、「認知症基本法」の中で、政府は内閣総理大臣を本部長とし、全ての閣僚をメンバーとする「認知症施策推進本部」を設置することとしている。非常に強力で重厚感のある推進体制だ。

 現在、政府には官房長官を議長とする「認知症施策推進関係閣僚会議」が設置されているが、「認知症基本法」が成立したら、この会議を格上げする形だ。

 そして、この「認知症施策推進本部」において認知症対策の総合戦略である「認知症施策推進基本計画」を策定することになる。今回、政府が策定した「大綱」は、国会で「認知症基本法」が成立すると、この「認知症施策推進基本計画」として位置付けられることになる。

 □本紙=現在開催されている通常国会は、6月26日(水)が会期末で、現在のところ「延長はない」と言われている。「認知症基本法」の法案が予定通り6月20日に提出されても、法案として成立するには衆参両議院の委員会と本会議の審議を経て、議決されなければならない。時間的に「厳しい」のではないか?

 ■鈴木=まずは今通常国会に法案を提出するが、審議時間が十分でない場合は、臨時国会であらためて通すことになる。年内に法案が成立するのは固いと考えている。

◇─[おわりに]─────────

 よく「政治は、一寸先は闇」と言われます。急に、何か大きな「問題」が生じると、それまで順調だった国会の審議が突然ストップしてしまうことは日常茶飯事です。また、どんな法案であれ、国会で十分な審議を尽くすことは当然です。

 それを承知の上で、この法案は可能な限り早く国会を通り、実際の認知症施策としてスタートすることを弊紙では願っております。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo-b.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆公式ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆ビジネス電子版=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo/blog

(C)2019 日本介護新聞

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年6月21日(金)第71号*****

◆◇◆◆◆─────────────
連載第2回=認知症の「予防」「バリアフリー」とは何か?
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 鈴木隼人衆議院議員が主催する「認知症国会勉強会」を取材していて、いつも感じるのは「全国には『草の根』で認知症と向かい合っている人たちが多い」ということです。特に「現場」の最前線で、認知症の方と向かい合っている人たちが講師として登壇します。

 この「勉強会」のような場があるからこそ、弊紙もこのような「草の根」の取り組みを知ることができますが、残念ながらそれらの「好事例」はなかなか世間一般に広く知られる機会がありません。

 それは、なぜなのか? それでは、どんな取り組みをすれば広く知られるようになるのか? ……今回の連載第2回目は、そんな疑問に応える内容になっています。どうか期待してご一読下さい。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
 なぜ、認知症を「予防」するのか?
───────────────────◆

 □本紙=「認知症基本法」の三本柱の1番目「予防」について。そもそもなぜ「予防」が必要なのか? また現状で「予防」が普及しないのは、なぜか?

 ■鈴木=写真・認知症国会勉強会にて撮影=世間では「どうせ予防なんて意味がない」との見方をする方が非常に多い。これをなんとかしないと、現状は何も変わらない。特に、医学関係者や著名な評論家の方々が「予防なんて……」と述べると、予防している人は何も言えない感じになる。
鈴木先生2
 認知症予防の活動をしている方々も社会に対して「間違いなく効果がある」と明確に主張できるかといえば、「これはきっと意味があるはず」くらいしか言えない。こうして根拠を主張できずに批判ばかり浴び続ける状況は、予防活動をする方々のモチベーションの継続という点で課題となる。

 私自身も「認知症予防の会」を立ち上げ、高齢者施設を継続的に訪問している。そんな時、お年寄りの方に「これは認知症予防に本当に効くんですよ」と言うことができれば、「それなら自分たちだけの時もやってみようかしら」となるはずだが、実態はそうではない。

 人間、楽しかったり効果がはっきり期待できることでなければ続かない。結局、認知症予防の取組がなかなか普及しない原因は「エビデンス(証拠・根拠)」の欠如によるところが大きい。

 この「エビデンス」の構築に向けては、日本全国の研究者に懸命な取組を続けていただいているが、残念ながら多くの研究結果は被験者数が少なすぎて、統計上有意と見なすことができないのが実情だ。

 全国でどれだけ多くの研究者が努力を重ねても、結果的に一部のコミュニティでしかその成果が認められない。「ここを解決しないと全く先に進めない」という問題意識もあり、私は今回の「認知症基本法」で予防を大きな柱に据えた。

 そして、法律の中で「全国規模の追跡調査を行う」ことを明記した。これにより、これまで個々の研究者が小規模に取り組んでいた研究が、国のバックアップも得ながら一つにつながっていくことになる。

 全国規模で、みんなが協力し合ってプロトコル(予め定められている規定・手順・試験・治療計画などのこと)をそろえて研究をすることで「エビデンス」を確立していく。これができれば、世の中はガラッと変わるだろう。

 そうして「やはり予防は大事だったんだ。効くんだ」「それなら私もやりたい」という機運を醸成していく。ここは非常に大事な点だと、私は考えている。

◆───────────────────
 認知症の「バリアフリー」とは、何か?
───────────────────◆

 □本紙=「認知症基本法」の三本柱の2番目「バリアフリー」について。そもそも「バリアフリー」とは、具体的にどのようなことなのか?

 ■鈴木=まず歴史的な経緯からご説明したい。もともと、世界的にもわが国こそが認知症対策の先進国であった。オレンジリングの活動をいち早く始めて、それをイギリスが「日本の取り組みは良い」と評価し、独自の手法で取り入れた。

 そうしたら本家本元の日本をはるかに追い越し、「認知症フレンドリー」先進国として名を馳せていった。では、イギリスでは一体何をやっているのか?

 まず、産業界が業界ごとに「認知症フレンドリー宣言」という名のアクションプランを策定・公表した。しかも宣言するだけではなく、現場の隅々までアクションを落とし込んでいった。例えば銀行であれば、認知症のお客さんらしき人が来て、ATMの操作に困っていれば、寄り添ってサポートしてあげる。

 また、バスの運転手さんであればお年寄りが乗ってきた時に「どこで降りるのですか?」と聞いておき、停留所に着いたら「着きましたよ」と教えてあげる。

 ところで皆さんも「親の財布が小銭で太り始めたら認知症を疑え」という言葉を聞いたことがあるのではないだろうか。

 実はこの「財布が太る」という現象、認知症当事者の人たちに聞くとれっきとした理由があることがわかる。「レジなどで支払いに時間がかかると列がつかえてしまうので、とりあえず大きいお札で払っている」というのだ。そこで、そういった声を受けて、ゆっくり支払いをしたい人のためのレジ「スローレーン」をつくったスーパーがある。

 そうしたら、認知症の方や障害をもった方がこの「スローレーン」を利用し始め、なんとスーパーの売上が1.4倍になったということだ。

 わが国も諸外国の良い取組を積極的に吸収し、もう一度認知症対策の先進国を目指すべきだ。認知症の人たちが生きがいを感じながら笑顔で過ごせる、そして家族も安心できる、そんな社会をつくっていく。課題感は広く国民に共有されつつある。今がその時だ。

 そんな思いから「認知症基本法」では「認知症バリアフリー」を大きな柱に据えた。そして法律の中に、わが国の法律史上初とも言える、極めて画期的な項目を盛り込んだ。

 それは、「産業界の責務」として、サービス提供時に認知症の人への配慮を行うよう努めるべき旨を規定したことだ。通常、「国の責務」「地方公共団体の責務」などはよく置かれるが、「産業界の責務」はこれが初めてだ。

 なぜこれを盛り込んだのかというと、これから官民挙げて認知症対策を抜本的に強化していく中で、(イギリスのように)産業界自らが認知症バリアフリー社会の実現に向けて積極的に取り組んでいく、そういう社会を「認知症基本法」をきっかけにしてつくっていきたかったからだ。

 実際、産業界も協力的で、このたび政府内に立ち上げた「日本認知症官民協議会」には多くの業界が参加し、前向きな検討がスタートしている。まさに国を挙げた「認知症バリアフリー」の取組が「認知症基本法」を機に大きく動き出していくことを、私は確信している。

◇─[おわりに]─────────

 最近は様々な業種から「今度、認知症予防に非常に効果的な、こんな商品を発売する」との記者発表会の案内を受け取る機会が増えました。確かに、それなりに「エビデンス」を持った商品であり、実際に手に触れたり取り組んだりしてみると、その効果は実感します。

 しかしなぜか、その後それらの商品が世間から注目を浴びるまでに至った事例は、残念ながらありません。当初は事業者側のPR不足の問題なのかと思いましたが、今回の鈴木議員の話を聞いていて「そうではないな」と認識しました。

 認知症「予防」の「エビデンス」が確立するには、それなりの時間がかかると思われます。しかし「バリアフリー」の取り組みはすぐにでもできることが、記事中の事例の通りいくつかあります。まずどこかの事業者が率先して「名乗り」を挙げてもらえれば……と思います。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo-b.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆公式ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆ビジネス電子版=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo/blog

(C)2019 日本介護新聞

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和元年6月18日(火)第70号*****

◆◇◆◆◆─────────────
連載第1回=「認知症基本法」法案、20日に国会提出
─────────────◆◇◇◆◆

◇─[はじめに]─────────

 今後の、認知症施策の大きな方向性を示すことになる「認知症基本法」が6月20日に国会に提出されます。この法案を起草し、関係議員への説得まで行ったのが鈴木隼人衆議院議員であることは、永田町周辺に出入りする業界関係者の間では周知の事実です。

 これまで弊紙では、認知症に関する記事を配信する際に、その多くは鈴木議員が主催する「認知症国会勉強会」を取材し、ここでの講演内容を元に記事を作成してきました。これまで11回開催されてきた「勉強会」で、半分程度は傍聴したと思います。

 この「縁」から弊紙では、この「認知症基本法」に関する取材を鈴木議員に申し入れたところ、快諾して頂きました。インタビュー時点ではまだ法案提出前であり、また通常国会の会期末の多忙な時に、弊紙のために時間を割いて下さった鈴木議員に感謝を申し上げます。

 一般紙等ではこれまで、認知症施策に関しては「もうすぐ政府が『大綱』を発表するが……」と書いてきましたが、「認知症基本法」のことは一般紙の紙面ですら見かけることはありませんでした。

 そもそも「認知症基本法」とは何なのか? どういう内容なのか? 18日に政府が発表した「大綱」と何が違うのか? これらの質問に、鈴木議員本人から全て回答を得ました。そこで弊紙では、今回を含めて4回連載で、その取材内容の全文をご紹介いたします。

 何らかの形で現在、認知症の方と接していたり、これから認知症の「予防」に取り組もうとしていたり、実際に介護現場で認知症のサービス利用者と日々接しておられるような読者に、大いに参考になる内容だと確信しております。ぜひ期待して、お読み下さい。

 日本介護新聞発行人

────────────────◇

◆───────────────────
そもそも、なぜ今「認知症基本法」なのか?
───────────────────◆

 □本紙=何で今回、「認知症基本法」がつくられたのか?

 ■鈴木=写真・認知症国会勉強会で撮影=これまで国の認知症総合戦略は、「オレンジプラン」から「新オレンジプラン」へと引き継がれてきた。私は、この「新オレンジプラン」をある程度評価している。認知症を取り巻く環境を広く見渡して策定した、大きな戦略になっているからだ。

鈴木先生 一方で、この総合戦略が具体的な施策レベルにまで十分に落とし込めているかと言えば心もとない部分があるし、また時代の変化に伴って新たに重点的に取り組むべきことも出てきている。

 こういった課題感をベースにしつつ、認知症対策全般をもっと前に進めていかなければならない。これが、今回「認知症基本法」を策定する際の一番の問題意識だった。これまでその必要性をずっと訴え続けてきて、ようやく今回「認知症基本法」を国会に提出(6月20日予定)できることとなった。

 ここまでの道のりは長かった。国会における認知症対策の議論が極めて低調だったからだ。私自身、認知症関連の議員連盟にはほぼ全て加入しているが、私が国会議員になってからの数年間、これらの議員連盟はほとんど開催されてこなかったのが実情だ。

 議員連盟で議論しなかったら、いったいどこで認知症対策について検討を行うのか? 「この状況はあまりにもまずいだろう」と、危機感をいだいていた。

 これからの超高齢社会において、認知症対策を抜本的に強化していかなければ、認知症が大きな社会課題になりかねないと考えたからだ。

◆───────────────────
「認知症基本法」は、どのような内容なのか?
───────────────────◆

 □本紙=(まだインタビューの時点では)法案提出前だが、「認知症基本法」の内容について、教えて頂きたい。

 ■鈴木=先ほども申し上げたように、認知症対策は国会でもっともっと議論を尽くして充実させていかなくてはならない。そのためには「羅針盤」が必要になってくる。今回の「認知症基本法」では、その「羅針盤」として3つの方向性を示している。

 1、予防
 2、認知症バリアフリー
 3、尊厳の尊重

 この3つが、今回の「認知症基本法」の三本柱だ。実はこの考え方は全く新しいものではなく、「新オレンジプラン」にも要素としてはちりばめられていた。しかし、この考え方が社会に十分に浸透していたかといえば、残念ながらそうとは言えない。

 そこで今回、わが国が向かうべき認知症対策の方向性を示した上で施策も充実させていくための基本法を策定した。では、この法律が社会に出ることで、何が変わるか? 三つの柱に即して説明する。

 【以下、鈴木議員へのインタビュー内容を今後3回連載で掲載いたします。基本的には、本日から連日で配信する予定ですが、発行人の都合により間隔が空く場合もございますので、その際はご了承下さい】

◇─[おわりに]─────────

 弊紙では偶然に、鈴木議員が主催する「認知症国会勉強会」を知り、第1回目から参加しました。以後も会場は全て、国会議事堂のすぐ目の前にある衆議院議員会館の中にある会議室でした。「何でわざわざ議員会館でやるのか?」、初めは不思議でした。

 実際に勉強会に参加してみると、会場の最前列には国会議員専用の席が設けられ、一般傍聴席はその後ろにありました。この勉強会は与野党を問わず、また一般傍聴も参加資格を問わないため、誰でも出席できます。

 確か最初の1~2回、ある程度の国会議員が参加されていましたが、その後は残念ながら出席議員がまばらな状況でした。記事の中で鈴木議員が「認知症対策の議論が国会において低調なままだと……」と発言している、その一例とも言えると思います。

 このまま、鈴木議員の取り組みが「空回り」で終わってしまうのではないか……。正直なところ、そんな懸念も感じながら「勉強会」を取材してきました。それが今回の法案提出で、一つの「成果」として結実したことは大変喜ばしいと弊紙では考えています。

 ただ、これは連載の最終回(第4回)で鈴木議員が述べているのですが「本当の取り組みは、これから」です。この「認知症基本法」が、一人でも多くの方が「一歩前に踏み出す」きっかけになれば、との願いを込めつつ、今後の行く先を追っていきたいと思います。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

────────────────◇

 ◆日本介護新聞・本紙(エンドユーザ─版)バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001677525.html
 ◆日本介護新聞「ビジネス版」バックナンバー
・PC/スマートフォン版=http://nippon-kaigo-b.blog.jp/
・携帯版=http://nippon-kaigo-b.m.blog.jp/
◎購読申し込み(「まぐまぐ」サイト)=https://www.mag2.com/m/0001687235.html
 ◆公式ホームページ=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo
 ◆ビジネス電子版=http://n-kaigo.wixsite.com/kaigo/blog
 ◆弊紙専用アドレス=n-kaigo@nifty.com
 ◆弊紙ツイッター=https://twitter.com/Nippon_Kaigo
 ◆Facebookページ=https://www.facebook.com/nipponkaigo

(C)2019 日本介護新聞

↑このページのトップヘ