日本介護新聞バックナンバー

弊紙は「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」を目指し、日本最大級のメルマガサイト「まぐまぐ!」を利用して配信しています。平成28年12月1日に創刊し、月に約3回発行しております。ここではバックナンバーを掲載しておりますので、ぜひご覧下さい。無料で購読できますので、ぜひ一度「まぐまぐ!」からお申込みを頂ければ幸いです。私たちは「初心者の視点」を忘れず、読者との「対話」を心がけ、読者の皆さんが最適な介護を選ぶのに役立つ「提案」をいたします。https://www.mag2.com/m/0001677525.html

2018年08月

*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****平成30年8月26日(日)第44号*****

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【今週の話題】居宅系サービスは家族に認知されているか?
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◇―[はじめに]―――――――――――

 通所系から施設系まで、幅広く介護事業所を展開している、関東地方のある事業者から聞いた話しですが、そこで運営している介護施設に高齢者が入居する際に、最も多いパターンは「インターネットで色々と調べてみた結果」だそうです。

 その「調べてみた」のは、施設に入居する本人のケースよりも、息子さんや娘さんなど、家族の場合がほとんどだそうです。

 家族の方々が施設に電話をかけてきて「実はウチの母親が入る介護施設を探しているのだが、ネットでそちらの施設の概要を見たのだが……」というきっかけで相談を持ち掛ける場合が、圧倒的に多いそうです。

 また、通所系のサービスの場合も、結果的にはケアマネジャーからの紹介がほとんどだそうですが、そのケアマネジャーに介護サービスの利用の相談を持ち掛けるのはやはり、サービスを受ける本人の家族になるそうです。

 では、その「相談を持ち掛ける」側の息子さんや娘さんは、親の介護をどう考えているのかーー今回はそこから見えてくる問題点について、考えてみたいと思います。

 ぜひ、じっくりとご一読下さい。

 日本介護新聞編集局一同

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 先週の「デイリー電子版」から……
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 先週は、以下の5本の記事を掲載しました。なお、URLは短縮機能を使用しています。

 8月21日(火)=脳トレができるシニア向けぬいぐるみ
https://bit.ly/2wuYHzA
 8月22日(水)=殺菌効果と低刺激性を両立させた消毒剤
https://bit.ly/2NjJGYx
 8月23日(木)=介事連設立総会「大同団結」呼びかける
https://bit.ly/2P9I4RD
 8月24日(金)=イソジンうがい薬「さわやか風味」追加
https://bit.ly/2P6Rugx
 8月25日(土)=父親の介護、女性の8割「抵抗あり」
https://bit.ly/2MRmS5n

 今回はこのうち、土曜日の「父親の介護、女性の8割『抵抗あり』」を取り上げたいと思います。

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 「親の介護は抵抗がある」ので「施設」か?
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 土曜日の「デイリー電子版」で取り上げたアンケートは、直接的には介護サービスと関係のない、全国に19院を展開する医療脱毛専門院「リゼクリニック」が実施しました。

 本来の趣旨は、「脱毛」に関する高齢者の家族の意識調査だったのですが、それ以外の項目でかなり気になった視点から質問を投げかけているため、記事として掲載しました。

 最も「気になった」のが、タイトルにも取り上げた、父親の介護を「抵抗あり」と答えた女性が8割もおり、さらに母親の介護を「抵抗あり」と答えた男性を大きく上回ったことです。具体的には、次のような設問(▼)と、回答(▽)でした。

 ▼自身と親の性別が異なる場合、介護をすることに抵抗はありますか?(単一回答)《全体/男女別》

 ▽抵抗はある=72・9%(男性62・0%/女性83・7%)
 ▽抵抗はない=27・1%(男性38・0%/女性16・3%)

 つまり、「娘が父親の介護に抵抗がある」=83・7%が、「息子が母親の介護に抵抗がある」=62・0%を、21・7ポイントも上回りました。

 この調査は、今年7月20日(金)から23日(月)の4日間、30代から50代の男女332名を対象に、インターネットで調査しました。当然のことですが「親の介護」が意識せざるを得なくなった世代の方々です。

 次に「両親の理想の介護方法」についての問答をみてみます。

 ▼親に介護が必要となった場合、どのように介護を行うと思いますか?(複数回答)《全体/男女別》

 ▽1、介護施設に入所してもらう=47・3%(男性45・2%/女性49・4%)
  2、自身で行う=46・7%(男性46・4%/女性47・0%)
  3.介護士に頼む=38・9%(男性35・5%/女性42・2%)
  4.自身の兄弟など、親類に頼む=19・3%(男性16・9%/女性21・7%)
  5、自身のパートナーに頼む=9・6%(男性12・7%/女性6・6%)
  6、親のパートナーに頼む=6・9%(男性5・4%/女性8・4%)

 「施設に入所」が「自身で行う」「介護士に頼む」を抑えて第1位になりました。

 これ以上は詳細な設問がないのですが、「介護士に頼む」は当然のことながら、これに加えて「自分で行う」も、通所系や訪問系の居宅サービスを利用しながらも、「親には施設ではなく、自宅にいてもらいたい」という気持ちを含んだ回答と思われます。

 おそらく、このアンケート調査の回答者はまだ、直接的には「親の介護」には直面していない方が多いと思われます。それを踏まえて「施設に入所」が「自身で行う」「介護士に頼む」を上回ったのは、どのような理由からなのでしょうか?

 ここで、さらに突っ込んだ調査をしていれば、それも考察できたのですが、単純に考えれば「親の介護には抵抗があるので、施設に入所してもらいたい」になるのかもしれません。

 残念ながらここから先は推測しかできませんので「正解」はないと思います。それでも敢えて、弊紙では次の設問に注目してみました。

 ▼今後、自身が介護を受けることになった際、誰に介護をされたいですか?(複数回答)《全体/男女別》

 ▽1、介護士=41・6%(男性37・3%/女性45・8%)
  2、誰にもされたくない=38・3%(男性38・6%/女性38・0%)
  3、自身のパートナー=20.8%(男性25・9%/女性15・7%)
  4、我が子=19・3%(男性18・0%/女性20・5%)

 結果は、「介護士」がトップになりました。これは「もし、自分自身に介護が必要になった時は、プロである介護士に任せたい」という意味だと思います。

 弊紙がここで注目したのは、先の設問で、親には「介護施設に入所してもらう」ことと「介護士に頼む」との間には、約10ポイントの差があることです。

 その答えを冒頭で紹介した問答と合わせて考えれば、「親の介護には抵抗があるので、施設に入所してもらい、プロの介護士にみてもらいたい」と考えることができると思います。

 しかし、弊紙がこれまで見てきた様々なアンケートでは、介護サービスを受ける可能性のある高齢者は、そのほとんどが「施設ではなく、住み慣れた自宅で介護を受けたい」と答えています。

 このギャップはどこにあるのかーー最も可能性が高いのは、「介護」についてまだ「親子で真剣に話し合っていない」ことが考えられます。

 しかし、これも「正解」はないのを承知で敢えて弊紙の仮説を述べますと「息子さんや娘さんの世代には、居宅系介護サービスに『馴染み』がないのではないか?」と考えます。

 確かに、息子さん娘さん世代がまだ、自分の親が「介護」の世話にもなっていないのに、「居宅系サービスを知っている」事例は極めて稀だと思います。

 しかし現実に、親の世代の「住み慣れた自宅で、介護サービスを受けながら長く暮らしたい」という願望を叶えるためにも、「30代から50代の方々に居宅系介護サービスの実情を『正しく』知ってもらう」ことは、今後の介護業界の発展のためにも極めて重要なことではないかと、弊紙では考えます。

 少なくとも今後、同じようなアンケート調査を実施した際に、「親に介護が必要になった時は?」の設問に、「施設に入所してもらう」と「居宅系介護サービスを利用して、プロの介護士にみてもらい、自宅にいてもらう」の答えが、拮抗するような状況になればと、弊紙では願っております。

◇―[おわりに]――――――――――――

 長い文書を最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

 介護とは直接には関係のない事業者が実施するアンケートは、結果をよく見ると意外な実態が浮かび上がってくることがあります。

 弊紙は介護の専門紙ですが、取り扱う記事の「ストライクゾーン」はできるだけ広く、例えボール三つ分くらい外れていても積極的に取り上げ、弊紙なりの大胆な「仮説」を立てて分析し、「課題」を提唱して、その解決策を模索していきたいと思います。

 今後ともどうか弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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*最適な介護を、自分で選ぶための情報紙*
┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****平成30年8月21日(火)第43号*****

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【今週の話題】「やりがい」だけに頼っていては……
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◇―[はじめに]―――――――――――

 厚労省をはじめ、介護業界では様々な機関や組織が、介護職員やサービス利用者にアンケート調査を行い、その結果を発表しています。

 前号(第42号)でも取り上げましたが、介護労働安定センターが8月3日に発表した、平成29年度「介護労働実態調査」は、よく読めば読むほど、そのタイトル通りに介護職員の「労働実態」が浮き彫りになってきます。

 今号では、前号で掲載した項目以外に、この調査結果の中から2本の話題を取り上げ、弊紙なりの分析をしてみたいと思います。

 特にその中から浮かんできたのは、使命感を抱いて日々、過酷な介護現場に立ち向かいながらも、待遇面では恵まれていない訪問介護員の実態でした。

 ぜひ、じっくりとご一読下さい。

 日本介護新聞編集局一同

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 先週の「デイリー電子版」から……
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 先週は、以下の5本の記事を掲載しました。なお、URLは短縮機能を使用しています。

 8月13日(月)=訪問介護8割が「人材不足」、競争激化
https://bit.ly/2MFnScy
 8月14日(火)=訪問介護平均月給20万円、賞与37万円
https://bit.ly/2vVeI1U
 8月15日(水)=退職理由上位は「職場環境・経営理念」
https://bit.ly/2OQyrqB
 8月16(木)=訪問介護員約7割「今の仕事続けたい」
https://bit.ly/2N3jxx1
 8月17日(金)=厚労省、ACPの愛称を募集
https://bit.ly/2w598uj

 今回はこのうち、火曜日の「訪問介護平均月給20万円、賞与37万円」と、木曜日の「訪問介護員約7割『今の仕事続けたい』」の二つを取り上げたいと思います。

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 介護職員の中でも、訪問介護員の待遇は……
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 火曜日の記事は、訪問介護員・介護職員・労働者・管理者の4職種について、それぞれの月給と賞与の平均支給額を調査した結果を掲載しましたが、次のような内容でした。なお、月給と年間賞与がわかっているので、弊紙ではこれを単純計算して、最後に「年収」を示してみました。

(職種=月額支給額→年間賞与→月額支給額×12+年間賞与)
▽訪問介護員=19万8486円→37万1984円→275万3816円
▽介護職員=21万1464円→54万7957円→308万5525円
▽労働者=22万7275円→57万2079円→329万9379円
▽管理者=35万6679円→70万9230円→498万9378円

 なお、4職種のそれぞれの名称の定義は、次のようになります。

▼訪問介護員=ホームヘルパー
▼介護職員=ホームヘルパー職以外の現場従事者
▼労働者=介護職に加え看護職員・ケアマネ・サービス提供責任者等も含む
▼管理者=事業所管理者=施設長

 実際の調査では、もう少し職種を詳細に分けて結果を集計していますが、おおまかな結果を発表する「概要版」では、以上の4職種を取り上げています。なぜこの4職種だったかと言えば、同じ介護職でも「訪問介護員」は他とは違った点が際立っていたからだと思われます。

 その最大の着目点は、「年収」の低さです。ちなみにこの調査では、月給の中に支給された交通費を含んでいます。おそらく訪問介護員は、電車を長時間利用して現場まで駆けつける、というケースは想定しにくいため、この「年収」がそのまま実年収に直結すると考えるのが自然だと思います。

 あと、この調査結果を読み取る際の注意点として、デイリー電子版では次のように記しました。

「なお同調査は、全国の8782事業所から回答を得て、そこで介護労働に従事する7万8576人の状況を調査しているが、上記の金額はいずれも「月給」者の平均であり、「日給」と「時間給」の者はこれに含めない。また「賞与」は、「賞与あり」と回答(労働者全体の70.1%、管理者全体の49・3%)した者の平均となっている」

 通常、訪問介護員は正社員としての待遇である「月給」よりも、「時給」で勤務するケースが多数です。この注釈をつけたのは、「訪問介護員の年収が低いのは、時給者を含んでいるためだ」と勘違いをしてしまう可能性があったからです。

 つまり、「月給」で比較しているこの4職種は同じ条件で見ることができます。そう考えると、訪問介護員の年収「275万円」というのは、仕事内容の過酷さから考えると、あまりにも「低すぎる」としか思えません。

 その一方で、木曜日に紹介したように、今後の仕事に関する希望を聞いた設問では、「今の仕事を続けたい」と答えた訪問介護員が、介護職員を圧倒的に上回りました。具体的には、次のような結果になりました。

「今の仕事を続けたい」=訪問介護員65・7%、介護職員52・0%
「今の仕事以外で(設問に記載されている職種の中で)仕事をしたい」=訪問介護員12・7%、介護職員22・8%

 「設問に記載されている職種」とは、訪問介護員・サービス提供責任者・看護職員・介護職員・生活相談員・ケアマネジャー・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等を指します。

 これら二つの項目の調査結果を合わせて考えると、特に収入等の待遇面で恵まれていない訪問介護員は、極めて高いプロ意識を抱いて、日々の仕事に臨んでおられる姿が浮かんできます。

 特に訪問介護員は、ほぼ一人で現場に出向くことになるので、そこでどんなことが起きようと己れ一人で判断しなければなりません。

 このような過酷な職場環境に置かれている訪問介護員が、待遇面で他の介護職種と「同等」でも不思議に思いますが、「劣っている」のは理解不能としか表現のしようがありません。

 「しかし、これが今の介護の世界の現実だ」と、この実態調査は主張しているのだと、弊紙では考えます。また、これが今後もずっと継続できるのかといえば、それには無理があることは、何らかの形で介護に携わった経験のある方なら誰しも共通に認識していると思います。

 では、どうするのか……。様々な方策を組み合わせることが必要だと思いますが、直近でやるべきことは、まずは前号で取り上げた「介護職員に対するハラスメント対策」を大至急とりまとめて実行することと、介護職員の大幅な処遇改善を早急に実施することではないかと、弊紙では考えます。

 国に、全ての責任を負わせようとすれば、それは決して有効な解決策に結び付くとは思えませんが、とりあえず上記の2つの対策だけは、厚労省の施策能力に期待をしたいと思いますし、エールを送りたいと思います。

◇―[おわりに]――――――――――――

 長い文書を最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

 前号でも触れましたが、先日からデイリー電子版とこの本紙の末尾に、弊紙が提携した広告を掲載しています。その次の展開として、弊紙の読者にとって参考になるような、弊紙と同じメルマガと「相互紹介」も開始する予定です。

 これらは常に、本紙の創業の精神に照らし合わせて、読者の皆さんに何らかの形でご参考になると判断したもののみ、掲載して参ります。

 今後ともどうか弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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【今週の話題】「入職3年以内」の離職防止策を……
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◇―[はじめに]―――――――――――

 本紙が目指しているのは「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」となることです。その視線は、介護サービスを受ける利用者の立場から発せられるべきものと考えています。

 これを逆の立場で、サービスを提供する事業者の立場から見れば、「利用者本位のサービスを提供すること」になると思います。これは、全ての介護事業者が目指すべき「理想」とも言えると思います。

 今週、デイリー電子版でニュースを取り上げる中で、この「目指すべき理想」である「利用者本位のサービス」が、時には本来の趣旨を逸脱して解釈され、介護業界の健全な発展を阻害しかねない危険性もはらんでいる……と実感することがありました。

 今回はその「実感」を、述べてみたいと思います。

 日本介護新聞編集局一同

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 今週の「デイリー電子版」から……
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 今週は、以下の5本の記事を掲載しました。なお、URLは短縮機能を使用しています。

 8月6日(月)=加藤大臣「厚労省分割、承知していない」
https://bit.ly/2McF1Lu
 8月7日(火)=介護職の離職率16%、3年未満が約7割
https://bit.ly/2Mef8L5
 8月8日(水)=国際福祉機器展2018、10月10日開催
https://bit.ly/2B4C5v9
 8月9日(木)=日本介護医療院協会2代目会長に鈴木氏
https://bit.ly/2nwjZbL
 8月10日(金)=NCCU、ハラスメント防止策を要請
https://bit.ly/2P3lkDx

 今回はこのうち、金曜日の「ハラスメント防止策を要請」をベースに、火曜日の「介護職の離職率16%、3年未満が約7割」を重ね合わせて考察したいと思います。

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 介護保険の理念「利用者本位」の落とし穴
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 弊紙は第38号(今年6月30日発行)で、「女性介護職員の3人に1人はセクハラ被害」とのタイトルで、労働組合である「日本介護クラフトユニオン(=NCCU)」が実施したアンケート調査の結果を報じました。

 この時は、タイトル通りに女性職員が受けた「セクハラ被害」に焦点を当てましたが、実際にNCCUの関係者に話しを聞いてみると、アンケートで聞き取りをした中には「警察の介入が必要となるような深刻な事案も含まれている」そうです。

 この事態を受け、NCCUは厚労省に「要請書」を手渡し、対処策の速やかな立案と実行を申し入れました。詳細は金曜日のデイリー電子版をご覧頂きたいのですが、この「要請書」は、次のリンクから閲覧できます。

http://www.nccu.gr.jp/rw/contents/C03/20180810000114.pdf

 この取材を通して弊紙が考えたのは、これがある程度の経験を積んだベテランの介護職員であれば、「自分なりの対処法」で最悪の事態に至る前に何らかの手を打つことができるかも知れませんが、もし入職したばかりの新人が同様の事態に直面すれば、とうてい個人では解決は難しいでしょう。

 この想像が現実の結果につながりそうなデータが、火曜日のデイリー電子版で取り上げた「介護職の離職率16%、3年未満が約7割」に盛り込まれています。これは、公益財団法人介護労働安定センターが毎年行っている調査から抜き出しました。

 世間一般では、「介護業界は職員の離職率が高い」と言われていますが、この調査結果によると、他の産業と比べて突出して高いわけではないことがわかります。

 また、経験年数別にみれば、「1年未満が38・8%」「1年以上3年未満が24・6%」で、合計すると「3年未満が65・2%」と、7割近くが集中しています。

 この調査は詳細にみると、現在の介護業界が抱える諸課題の「根本」が浮かび上がってきます。このため、今後も弊紙では継続的にこの調査結果の内容を、テーマごとにクローズアップしてご紹介していこうと思いますが、その中に「介護関係の仕事を辞めた理由」あります。

 これによると、複数回答になりますが、第1位は「職場の人間関係に問題があったため」で20・0%。第2位は「結婚・出産・妊娠・育児のため」で18・3%。第3位は「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」で17・8%でした。

 これらの結果を考え合わせると、介護職員の離職者は「3年以内で、職場の人間関係等に悩んだ人に多い」ことが透けて見えてきます。

 これに先ほどのNCCUの調査結果を考え合わせると「入職後3年以内の新人職員が直面した課題や困難に、所属する介護事業所がいかに対応するか」が、大きなキーポイントとなってくる気がします。
 実は、NCCUが提出した「要請書」には、次のような一文が書かれています。

 「ご利用者やそのご家族の介護保険に対する認識不足により、『利用者本位』に甘んじて発生しているハラスメントが散見され、それが原因で志半ばに離職してしまう介護従事者もいます」

 これを踏まえ、「要請」の一項目として「ご利用者とそのご家族への周知啓発を行うこと」をNCCUは掲げています。

 「利用者本位」は、全ての介護サービス事業者が目指すべき目標であり、介護保険制度の理念でもあると言えます。しかしその大切な「理念」が、大きな「落とし穴」に落ちようとしているのも、現在の介護業界の実態であると思います。

 行政が、何らかの施策を講じれば、全てが解決するとは到底思えません。しかし、厚労省が本気になってこの大きな「落とし穴」に向かい合い対策に取り組むことで、解決に向けて第一歩を踏み出すことができると思います。

 弊紙も今後、その動きを追うとともに、厚労省にエールを送りたいと思います。

◇―[おわりに]――――――――――――

 長い文書を最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

 前号(第41号)の「おわりに」にも書きましたが、日本介護新聞社の「創業」の第一歩として「デイリー電子版」にアフィリエイト広告のリンクを始めます。今回はそのさきがけとして、本紙の最後に「靴下職人がつくる靴下」の広告をリンクしてみました。

 これを今後は、デイリー電子版にも広げて参りますが、弊紙の創刊の精神である「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」は決して忘れることなく、広告は選択して参ります。

 今後ともどうか弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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【今週の話題】介護サービスは「利用者本位」へ……
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◇―[はじめに]―――――――――――

 現在、平日はほぼ毎日「デイリー電子版」を更新していますが、わずか1週間で5本の記事を取り上げただけでも、介護業界の現在の「動き」が見えてくるような気がします。

 今年4月の介護報酬改定で、「リハビリテーション重視」「IT機器・システムの導入」などの要素が加算項目に加わりました。いずれも「できるだけ介護保険料を抑えたい。年々膨らむ社会保障費を抑制したい」ことが、国の「本音」であることは間違いないでしょう。

 その一方で報酬改定以降、一部の事業者が新たなサービス事業を開始したことを弊紙ではお伝えしてきました。取材をしていて率直に感じるのは「介護サービス利用者の目線に立った事業」が誕生している、ということです。今回はその一例をご紹介したいと思います。

 日本介護新聞編集局一同

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 今週の「デイリー電子版」から……
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 今週は、以下の5本の記事を掲載しました。なお、URLは短縮機能を使用しています。

 7月30日(月)=介護施設で「買い物代行サービス」
https://bit.ly/2KsqdT6
 7月31日(火)=8月から「3割負担」始まる
https://bit.ly/2Ml39HN
 8月1日(水)=母趾負担軽減シューズ
https://bit.ly/2ndwCbH
 8月2日(木)=IoTトイレで、ねこのヘルスケア
https://bit.ly/2ndEj1i
 8月3日(金)=豊島区、8月から「混合介護」を実施
https://bit.ly/2OHD1bA

 このうち、月曜日の「介護施設で『買い物代行サービス』」と、金曜日の「豊島区、8月から『混合介護』を実施」に今回は注目してみたいと思います。

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 サービス利用者の「利便性」を考える
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 介護業界大手で、多くの介護施設を運営しているSOMPOケアが8月から、自らの施設で新たなサービスの実証実験を始めました。利用者が、自分の欲しいモノが施設にいても自由に買えるように、施設内に置かれたタブレットで注文をする、というシステムです。

 これだけみれば、例えばAmazonのような既存のネットサービスと何ら変わりないと思われますが、実は施設側にとっては大変メリットのあるサービスシステムになるようです。実際に、SOMPOの関係者に話しを聞いてみて「なるほど」と思う点がいくつかありました。

 介護施設入居者、特に介護付き有料老人ホームに入居している方々は、日々の食事から運動など、日常を介護施設側が決めたルールやスケジュールに従って生活することが求められます。

 このため買い物をするにも、例えば決められた自由時間に外出したり、その方の身体状況によっては介護職員が付き添ったり、ある程度の制限が設けられます。

 また日常生活全般は、基本的には施設内で全て「解決」するため、お財布をもって現金の管理をする必要はありません。

 そこでもし、利用者がAmazonのような外部の通販サービスを利用した場合、施設側は利用者に代わって商品を受け取ったり、時には「代金を仮払いして、後で清算する」こともあるそうです。

 単純に考えて、この一連の過程に何ら問題がなさそうですが、施設側からするとこの「代金の仮払いが事務手続き上、非常に面倒になる」ことがあるそうです。特に介護職員の人手不足で悩んでいる施設は「伝票処理だけでも、大変な時がある」とも言います。

 そこでSOMPOでは、各施設内においたタブレットで、介護職員や利用者本人が「商品の注文」を行うシステムを構築しました。

 商品の申し込み先は、同社と提携している事業者になります。そしてココが最大のポイントになるのですが、「注文した内容は自動的にデータが処理され、伝票処理なども人手をかけずにできる」ようになるそうです。

 後は、どれだけの商品を利用者が自由に選べるのか……、そのラインアップの充実が望まれますが、ココで弊紙が注目したのは、このアイデアが「施設の現場のスタッフから発案された」ことです。

 本来、施設職員も「できるだけご利用者の要望に応えたい」という願望は持っているはずです。しかし現実には「一つの注文を受けて処理するだけで、それなりの人手と時間がかかってしまい、残念ながらこれまではご要望にうまくお応えすることができなかった」といいます。

 SOMPOでは、8月から同社の3施設で実証実験を開始しその後、他の施設にも拡充し、来年3月からはこのシステムを他社へ外販することを計画しています。

 同社が意図しているように、施設利用者のニーズに応えることができるのであれば、このようなシステムはどんどん介護業界の内外へ拡充していって欲しいと思います。

 もう一つの、豊島区が取り組んでいる「混合介護」も、介護サービス利用者の利便性が図れるという点で、弊紙としても応援したいと思います。

 詳細な内容は「デイリー電子版」をご覧頂きたいのですが、一時期は発案者である小池百合子東京都知事の、世間の政治的な関心度の高まりに比例して、この「混合介護」もマスコミ等で大きく取り上げられました。

 しかし、同じくその政治力の失速に沿うように、一般紙等でも「混合介護」は取り上げられなくなりました。本来は「介護サービス利用者の選択肢を増やす」ことがその意図だったはずなのですが、「政治的な関心」でニュースの重要度が左右されてしまった感を強く受けます。

 しかしその「失速」にもめげず、豊島区は東京都の協力を得ながら、有識者会議等で地道に検討を重ね、サービス制度を構築し、8月1日からサービス実施にこぎ着けました。弊紙は、この豊島区の努力に拍手を送りたいと思います。

 特に今回の「混合介護」は、サービス提供事業者に全てを任せ切りにするのではなく、豊島区が行政としてサービス全体に深く関与することが最大の特長となっています。

 今後、サービス利用者のニーズを丹念に吸い上げながら、他の自治体の「手本」となるような事業へと進化させていってもらいたいと思います。

 SOMPOの新たなサービスは施設系介護サービス、豊島区の「混合介護」は在宅系介護サービスと、それぞれ分野は異なりますが、介護サービス利用者の利便性を高めることがその最終目的である点は共通していると思います。

 介護サービス事業は、介護報酬の改定に大きく影響される部分が大きいことは事実だと思います。

 しかし法制度とは全く異なる「利用者本位」の視点で、新たなサービスを付加していけば制度全体が充実してくるものと捉え、今後も弊紙では介護業界内外の「新たな動き」を追っていきたいと思います。

◇―[おわりに]――――――――――――

 長い文書を最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。

 弊紙は創刊時から「日本介護新聞社をいずれ創業する」ことを宣言してきました。まだ創刊から2年にも満たない「ヨチヨチ歩き」の状態ですが、このたびの「デイリー電子版」の開始で、弊紙の一つのスタイルが築けたものと思っております。

 このため、「創業」の第一歩として「デイリー電子版」にアフィリエイト広告のリンクを近々始めたいと思います。その際にも、弊紙の創刊の精神である「最適な介護を、自分で選ぶための情報紙」に適するような広告のみ、掲出してまいります。

 今後ともどうか弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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