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*****令和元年6月23日(日)第73号*****

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連載第4回=認知症施策は「次のステージ」に入るのか?
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◇─[はじめに]─────────

 鈴木隼人衆議院議員の「認知症国会勉強会」は、これまで11回の開催を重ねています。途中、何回か取材できなかった回もありましたが、弊紙は第1回目より参加しています。それを踏まえて「よくここまで続いてきたなぁ」というのが、正直な実感です。

 今回の「認知症基本法案」の国会提出は、その積み重ねの一つの結論ではなかったかと思いますが、鈴木議員はこれまでを振り返って、どのように感じているのか、また今後、どのように「認知症予防」の活動に取り組んでいくのか、聞きました。

 これまでの3回の連載では「認知症基本法」そのものに対して質問してきましたが、最後の第4回目は「認知症国会勉強会」について、尋ねました。

 日本介護新聞発行人

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認知症予防は「点から面へ」移行したのか?
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 □本紙=鈴木議員はこれまで「認知症国会勉強会」で、「認知症予防活動は、点から面へ展開することが重要だ」と指摘してきた。現時点で、これはどの程度実現したと考えているのか?

 ■鈴木=写真、認知症国会勉強会で撮影=まず「認知症基本法」では予防を柱に据え、全国規模の追跡調査を行うことを規定した。また政府の「大綱」にも同様の項目を盛り込んだ。
鈴木議員
 このように、予防のエビデンス構築を面展開していく環境づくりは「認知症基本法」と「大綱」で整えられたと思っている。また、私は一昨年、「全国認知症予防ネットワーク」を立ちあげた。

 「全国認知症予防ネットワーク」では、全国のメンバー向けにセミナーや勉強会、交流会などを行っている。実は「認知症国会勉強会」はその勉強会も兼ねて開催している。

 これらの活動を通じ、ネットワークに加盟する方々の個々の活動のモチベーションが向上したり、活動の質の向上が図られたり、その結果として認知症予防の普及が進んだり、といった面的効果もあがっていると考える。

 ただ、本当のスタートはこれからだ。エビデンスをしっかりと構築して、そのエビデンスを元に全国に認知症予防を普及していきたい。

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認知症に対する世間の「考え方」は変わったのか?
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 □本紙=「認知症国会勉強会」の中で、「今後の認知症施策は、当事者を起点とした地域づくりを(弊紙5月26日付け第67号参照)」との指摘があった。これに対し、鈴木議員の現状認識は?

 ■鈴木=ここ数年、認知症当事者の皆さんが非常に積極的に声を挙げている。このことによって、本人の置かれた状況や日々感じていることを周りの人が知る機会が増えてきた。これは大きなインパクトを持っていると思う。

 社会を変える「種」は認知症当事者の皆さんご自身に蒔いて頂いた。「認知症基本法」はこれからその種を芽吹かせるにあたっての、「水」のような存在になると思う。

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中重度の人にとっての「フレンドリーな社会」とは?
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 □本紙=弊紙の読者から「認知症フレンドリーと言っても、中重度の認知症の方の意向を尊重することは時として非常に難しいのではないか?」との質問を頂いた。具体的には「買い物の時に『払った、払っていない』の問題を起こして以降、引きこもりがちになってしまった人がいる」とのことだったが、この点に対する鈴木議員の認識は?

 ■鈴木=少し脇道にそれるが、社会を変えていく上で、テクノロジーが果たす役割は非常に大きい。テクノロジーの社会実装によって世の中はどんどん変わっていく。

 例えば、最近スーパーや病院など様々な場所でセルフレジが目立つようになった。セルフレジであれば、「払った、払っていない」という問題は生じない。

 このように、何か社会課題が露呈する時には必ず、それに対応するようなテクノロジーが出てくるものだ。

 質問については、意向の尊重は大変重要なことだが、重症度合いによってはそもそも意向を示すことができないなどの難しい場面も出てくるかもしれない。

 私は「認知症基本法」のカギは「尊厳」だと考えている。その人が「何をしたいのか」「どう生きたいのか」を尊重して接することで、周辺症状が軽減し、当事者のQOLも上がっていくことになる。

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「基本法」の制定で「新たなステージ」に入るのか?
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 □本紙=今回「基本法」が成立することで、鈴木議員ご自身の活動も「新たなステージ」に入るのか?

 ■鈴木=国民医療費が高騰し、一方で経済成長は非常に緩やかというマクロ経済情勢の中で、無尽蔵に社会保障関連予算を増やすことは不可能だ。

 従って「限られたパイ」をどのように分配するかが、政治に求められる重要な役割になってくる。社会保障分野は課題山積だが、認知症対策はその中でもトップレベルのプライオリティと言っていい。

 ちなみに、認知症にかかっている社会全体のコストは約14.5兆円と言われる。うち医療費が1.9兆円、介護費は6.4兆円だ。残りの6.2兆円は何かと言うと、インフォーマルケアコスト、つまり家族などによる無償の介護を金額に換算したものだ。

 ただでさえ人口が少なくなって、働き手が足りなくなる中で、介護に人手を要する認知症がこれからもっともっと増えていき、介護離職もそれに伴って増えていく事態が生じれば、もう社会全体として「目も当てられない」という状況になる。

 ワーストシナリオは国の税収が減り、社会保障費を国が賄えなくなることだ。そうならないためにも、限られたパイの中で、認知症対策への予算配分を厚くしていかねばならない。

 その役割を担うのは政治だ。今回の取材の冒頭に、「国会での認知症対策の議論が低調」と指摘したが、「認知症基本法」の検討に当たり、一時的に議論が活性化した。

 しかし、私が主催する「認知症国会勉強会」への国会議員の参加者数をみる限り、まだまだ永田町における関心は低いと言わざるを得ない。「認知症基本法」が成立したら終わりではなく、この法律によって私たちはようやくスタートラインに立つことができるのだ。

 これから私たちは本気で、認知症施策をいかに充実させていくかの議論をやっていかなくてはならない。そういう意味で「次のフェーズ」に入ったとは思うが、「次のステージ」にはまだ立てていないと思う。

 スタートラインには立った。けれど国会における認知症の議論はまだまだこれからだ。そういったことを念頭に、私はこれからも「認知症国会勉強会」を地道に続けていきたい。

◇─[おわりに]─────────

 最近、発行人の近所のスーパーマーケットで「自動レジ」が導入されました。これにより、会計で細かなお金を用意しなくても、極端に言えば「財布の中の有り金を全て機械に投入すれば、自動的に機械がつり銭を計算して出してくれる」ようになりました。

 この「自動レジ」は、あくまでレジ係の人の作業量削減と省力化が目的で導入されたものと思いますが、対象が老若男女に限らず、ユーザー側にとっても非常にメリットが大きいシステムだと思います。

 これがさらに一歩進んで、「認知症フレンドリー」が主目的で導入されるようになれば、日本の社会全体が「大きな一歩を踏み出した」と言えるのではないか、と考えます。一刻も早く、そんなことが「日常的」になる社会になって欲しいと、切に願います。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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