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*****令和元年6月22日(土)第72号*****

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連載第3回=「尊厳」に、どう向き合うのか?
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◇─[はじめに]─────────

 当たり前のことですが、そもそもどんな人間であっても「尊厳」は尊重されるべきです。では、日頃から本当に、どんな人に対しても「尊厳を尊重しているか?」と問われれば、お恥ずかしながら発行人は自信を持って答えることができません。

 弊紙ではこの「尊厳」に関する質問をする際に、鈴木隼人衆議院議員に「認知症の方の『意向』を尊重するということか?」と質問しました。それに対する回答が、この第3回目の連載で述べられています。

 読者の皆さんなりの「尊厳」の考え方と照らし合わせて、記事をお読み頂けると幸いです。

 日本介護新聞発行人

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認知症の人の「尊厳」は、どのように尊重するのか?
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 □本紙=「認知症基本法」の三本柱の3番目「尊厳」について。そもそも「尊厳」とは、具体的にどのようなことなのか?

 ■鈴木=写真、認知症国会勉強会で撮影=一部の医療機関や介護施設において、薬剤の過剰投与によって周辺症状(=妄想、興奮、徘徊などの症状群)を悪化させたり、かえって寝たきりになるなど体調を崩したりしているケースや、過度の身体拘束(ベッドに体を縛り付けるなど)が行われているケースが、現実に報告されている。

鈴木議員2 現行の法律で、過度な身体拘束は禁止されているにもかかわらず、残念ながらそのような報告も散見されるのが実情だ。「これは何でなんだろう?」と考えると、やはり私は、根っこは「尊厳をいかに尊重しているのか」だと思う。

 認知症の人の意向を汲むことは疑いなく大変重要なことだが、重症度合いによってはそもそも意向を示すことができないなど、難しい場面も出てくるかもしれない。私は「認知症基本法」の肝は「尊厳」だと考えている。その方が「何をしたいのか」「どう生きたいのか」ということを周りがキチンと汲みとる。

 そして、その想いを尊重して接することで、周辺症状が軽減し、当事者のQOLが上がっていく。結果的に医療機関や介護施設の皆さんのご負担も減り、みんながウィンウィンになる。

 そういった観点から「十分に尊厳を尊重しているか?」と振り返ると、多くの施設において、まだまだ工夫の余地が残されているのではないかと思う。そこで今回の法律では、「尊厳の尊重」を三本の大きな柱の一つに位置付けた。

 そして、「医療機関や介護施設の責務」として良質な医療、福祉の提供に努めるべき旨を規定し、さらに国や地方公共団体は医療や介護従事者の資質向上に向けた取組を行っていくことも法律に盛り込んだ。

 これから医療・介護の現場に「尊厳の尊重」という魂がより一層こめられていく。そして、認知症の人たちが生きがいを感じながら笑顔で過ごすことができ、家族も安心して暮らせるようにしていく。以上が、私が「認知症基本法」に込めた想いであり、この法律が社会を大きく変えていくであろうと思っている点だ。

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「認知症基本法」と「大綱」は、どう違うのか?
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 □本紙=残念ながらこれまで、一般紙等では「認知症基本法」の報道はほとんど見かけないが、「大綱」の話しはたびたび目にする。両者はどう違うのか?

 ■鈴木=「認知症基本法」は国会がリードしている議員立法で、「大綱」は政府が策定した戦略だ。厚労省とはこれまで多くの意見交換や共同作業の場を経て志を一つにしており、「認知症基本法」と「大綱」も相当噛みあったものになっている。

 そしてこれは大変珍しいことだが、私が主催する「認知症国会勉強会」にも、厚労省は毎回出席している。だから厚労省も、課題感や「羅針盤」は十分に共有してくれていると考えている。次の課題は「認知症基本法」や「大綱」に謳った精神を、しっかりと施策レベルに落とし込んでいくことだ。

 なお、「認知症基本法」の中で、政府は内閣総理大臣を本部長とし、全ての閣僚をメンバーとする「認知症施策推進本部」を設置することとしている。非常に強力で重厚感のある推進体制だ。

 現在、政府には官房長官を議長とする「認知症施策推進関係閣僚会議」が設置されているが、「認知症基本法」が成立したら、この会議を格上げする形だ。

 そして、この「認知症施策推進本部」において認知症対策の総合戦略である「認知症施策推進基本計画」を策定することになる。今回、政府が策定した「大綱」は、国会で「認知症基本法」が成立すると、この「認知症施策推進基本計画」として位置付けられることになる。

 □本紙=現在開催されている通常国会は、6月26日(水)が会期末で、現在のところ「延長はない」と言われている。「認知症基本法」の法案が予定通り6月20日に提出されても、法案として成立するには衆参両議院の委員会と本会議の審議を経て、議決されなければならない。時間的に「厳しい」のではないか?

 ■鈴木=まずは今通常国会に法案を提出するが、審議時間が十分でない場合は、臨時国会であらためて通すことになる。年内に法案が成立するのは固いと考えている。

◇─[おわりに]─────────

 よく「政治は、一寸先は闇」と言われます。急に、何か大きな「問題」が生じると、それまで順調だった国会の審議が突然ストップしてしまうことは日常茶飯事です。また、どんな法案であれ、国会で十分な審議を尽くすことは当然です。

 それを承知の上で、この法案は可能な限り早く国会を通り、実際の認知症施策としてスタートすることを弊紙では願っております。

 今後ともどうか、弊紙をご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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